野菜ソムリエ Hiro のベジフルポケット

孫悟空が食べた平らな桃、蟠桃(ばんとう)について知っておきたいこと5つ

日本では夏の時期になると、桃が大人気ですよね!
野菜ソムリエHiroも桃で有名な岡山県出身なので、桃にはほかの果物より思い入れがあります。

カナダでは残念ながら日本で出回っているようなちょっと触っただけでも傷んでしまう繊細な桃は販売されていません。逆に硬めの丸い桃が主流です。ただ、アジア系スーパーマーケットで主に見かける、もう一つの人気の桃があります。それがこちら。

そう、平べったい桃「蟠桃(ばんとう)」です!(蟠桃は品種名ではなく平べったい桃の総称

日本ではまだまだ知られていないこの蟠桃について、今回は知っておきたいことを5つに分けてまとめてみました!
 

1. 蟠桃(ばんとう)はどこで生まれたの?

桃の原産地は中国・黄河上流といわれています。皆さんもなんとなく、「桃=中国」というイメージもあるかもしれません。カタチが扁平(へんぺい:ひらべったい)な蟠桃の原産地も中国で、何千年もの間中国で栽培されています。

日本では明治頃に中国、ヨーロッパやアメリカから多くの桃の品種が導入されています。そして今では世界中で桃の品種は3,000種以上にものぼるといわれていて、蟠桃も中国には多くの品種があるといわれています。

実は日本には1875年に蟠桃が導入されたといわれているので、その頃から日本で蟠桃の存在を知っていた方もいるはずなんですね。

また、桃は改良された場所などから「北方品種群」「南方品種群」「ヨーロッパ系品種群」の3つの品種群に区別もできるといわれているのですが、バントウは南方品種群(華中系品種群、東アジア系品種群)に該当します。

ちなみに蟠桃という名前以外にも「平桃(ぴんたお)」「座禅桃」とも呼ばれ、英語圏では「ドーナツピーチ(Donut Peach)」「フラットピーチ(Flat Peach)」「サターンピーチ(Saturn Peach)」「UFOピーチ(UFO Peach)」などと言われています。

野菜ソムリエHiroが暮らすカナダBC州バンクーバーでは、ドーナツピーチという表記が一般的となっています、


 

2. 中国の文学作品に登場している~西遊記に登場する不老不死の桃~

蟠桃は中国の文学作品によく登場しています。

まずは日本でもよく知られている西遊記。三蔵法師が孫悟空、猪八戒、沙悟浄とともに天竺へ取経を目指す物語です。

その物語の中で、孫悟空は天界で暮らしている貴婦人の西王母(せいおうぼ)の蟠桃園(ばんとうえん)の管理人に任命されます。その蟠桃園には3,600本の蟠桃の木があるのですが、以下のように熟す頻度と食べた後の効果が異なっていました。

・手前の1,200本 ⇒ 3,000年に一度熟す。食べると仙人になれる
・中間にある1,200本 ⇒ 6,000年に一度熟す。食べると長生不老になる
・奥の1,200本 ⇒ 9,000年に一度熟す。食べると天地のあらん限り生き永らえる

そして西王母の聖誕祭「蟠桃会(ばんとうえ)」があるのですが、その宴会では神々と仙人たちが蟠桃を食べるんです。そんな中、孫悟空は蟠桃会に自分が招かれなかったことから、蟠桃会に用意されていた奥の桃を食べてしまうというシーンがあります。

また、中国明代に成立した仙人、道士、そして妖怪が戦争をする小説「封神演義(ほうしんえんぎ)」や、西遊記と並び四遊記のひとつとして知られる「東遊記」、1818年に清代の作家が発表した小説「鏡花縁」などにも蟠桃会が登場するとのことなので、気になる方はぜひ小説を読んでみるのも面白いかもしれません。


 

3. 蟠桃の旬とお店での選び方は?

蟠桃は北米だと早くて5月頃から9月頃くらいまで出回る果物です。日本と同じように品種によって、出回る時期が異なってきます。

夏場が最盛期ですが、9月下旬に入ってもバンクーバーのアジア系スーパーでまだ見かけますよ。

お店で選ぶときは、果皮に産毛のあるピンク色タイプの蟠桃であれば、以下を参考にしてみてください。

・ふっくらとした感じのもの
・見た目より重さがあるもの
・産毛がちゃんとあるもの
・ピンクがきれいに色づいているもの
・しおれていないもの
・香りが強いもの
・緑がかったものは未熟果の可能性が高い
・茶色っぽい傷んだ部分が無いもの

お店に並んでいるものは基本硬めで購入後に家での追熟が必要なので、注意しましょう。常温で保管しておくと、次第に柔らかくなってきます。

触ってみて少し柔らかさを感じ、皮がペロリと剥けるのであれば、十分食べ頃ではないかと思います。

 

4. 蟠桃にも種類がある~蟠桃3種類を実際に食べてみた感想を紹介~

先述したとおり蟠桃にも色々と品種があるのですが、果皮の違いで分けて大きく以下の3つの中に色んな品種がある感じです。実際に食べてみた感想もお届けします。

4-1.果皮がピンク色の蟠桃(ドーナツピーチ Donut Peach)

最も一般的な蟠桃です。

蟠桃は日本で主流の桃と比べて硬い状態で流通しているので、上の写真のように売り場でごそっと積んでも傷みません。(熟すと柔らかくなります)野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーでも最も多く見かけます。

バンクーバーでよく見かける蟠桃はアメリカの Family Tree Farms という農園でつくられたものも多いのですが、この前商品の箱を見たら「August Saturn」と書かれていて、このオーガストサターンというのが品種名の一つなのではないかと思っています。(ぐぐっても情報が出て来ず、確証無しです)

また、中央カリフォルニアのキングスバーグ果樹園(Kingsburg Orchards)では4つの白果肉タイプの品種が育てられていることが確認できました。(May Flying Saucer / Galaxy Flying Saucer / Pink Flying Saucer / Late Flying Saucer)

ひとつ手に取ってみたときの写真は以下になります。どのくらい平べったい感じか伝わるでしょうか?

個人的に「カナダで手に入る桃の多くは、ふるさとの岡山の桃に比べると味がいまいち・・・」と感じているのですが、うまく熟した蟠桃は岡山の白桃を彷彿とさせる果汁の多さと甘さなんです。

以前食べたやつは、糖度12度くらいはあったんじゃないかと思うくらいの甘さとジューシーさでした!

また、バンクーバーで手に入るピンク色の果皮の蟠桃の果肉は白色しか見たことがないのですが、ピンク色の果皮で黄色果肉のものや浅い緑っぽい色のものもあるので、一度食べてみたいと思っています。(調べたのですが、品種名までは分かりませんでした・・・)

 

4-2.果皮が黄色の蟠桃(ピーチパイ/ Peach Pie)

続いては、黄色の果皮が美しい黄桃タイプの蟠桃です。

まずどんな品種があるのかネットで探してみたのですが、全然情報が無くて唯一見つけたのが、中央カリフォルニアのキングスバーグ果樹園(Kingsburg Orchards)が育てている「Golden Moon」という品種くらいでした。(現地で7月下旬頃に収穫)

そこそこ珍しくて、個人的にバンクーバーで約7年のくらいの間に今まで2回だけ見かけたことがあるのですが、その際はどちらも「ピーチパイ」という名前で販売されていました。初めてその名前を見たとき、「え、可愛い・・・」と思った記憶が今でもあります笑

(6つ買って10カナダドルくらいでした。日本円で874円くらい)

上の写真のものもバンクーバーの八百屋で見つけた際のものですが、先ほど紹介した Family Trees Farm のシールが貼ってありました。(この時見つけたものは、ピンク色果皮の蟠桃よりけっこう小ぶりで、果皮の産毛がよりもさもさしてました。そういう品種だったのかもしれません。)

手に取ってみたときの写真は以下になります。

そして、購入から1~2週間少し柔らかくなるのを待ったんですが、全然柔らかくならず、まだ果皮がぺろりと剥ける段階の前で食べてみました。

半分に切ると上の写真のような感じ。果肉も黄色というか黄金色!その美しさに感動しました。

肝心の食味は、やはり黄桃であるためか果肉がしっかりとしていて、歯ごたえが楽しめました。しかし、まだ爽やかな酸っぱさの残る甘さだったので、もう少し待っても良かったかと思いました。

次回手に入れた際は、また感想を更新したいと思います。

 

4-3.果皮が無毛なやつ⇒ドーナツネクタリン(Donut Nectarin)

3つめは果皮に毛が無いネクタリンタイプの蟠桃です。

野菜果物の情報サイト Specialty Produce によると、ドーナツネクタリンは遺伝子組み換えされておらず、中国原産の蟠桃栽培品種の突然変異から自然に生まれたものであるとのことです。

果肉は白と黄色の両方があり、米国では15~20種類くらいのドーナツネクタリンの品種が栽培されているそうです。

特に人気な品種が同じく Specialty Produce に記されていました。(Honey Halo / October Snow / Snack Time / Sugar Pie / Nectafire / Nectapie)

手に持った感じは以下の通り。果皮に毛が無いので、当たり前ですがツルツルしていました。

今回購入したものはけっこう売り場で熟していたので、すぐにカットしてみました。

果肉は黄色タイプ!

ドーナツネクタリンは酸味が少なくて糖度が高いといわれているのですが、実際食べてみるとまさにそんな感じで、ちょっと感動するくらいとても甘かったです!今まで食べたネクタリンの中でも最高の味わいだったかもしれません。

果汁もたっぷりで、外からはあまり分からなかったけど、食べると桃らしい香りが十分に口に広がりました。食味の良さでは、ピンク色果皮と黄色果皮の蟠桃を凌ぐと個人的に思いました。

 

5. 蟠桃は日本でも少量栽培されている

中国や北米では一般的な蟠桃ですが、日本ではまだまだ知らない人も多いであろう蟠桃。「幻の桃」なんて呼ばれることもあるようですが、実は少量ながら国産のものが栽培されています。

栽培しているのは、野菜ソムリエHiroが調べた感じだと、秋田県、和歌山県、福島県、そして岡山県でも栽培している方がいるようです。

豊洲市場ドットコムさんでは夏頃になると蟠桃(ばんとう)が販売されていたりするので、日本にお住まいの方で蟠桃(ばんとう)を食べてみたい方は夏頃になったらぜひチェックしてみてください。