野菜ソムリエ Hiro のベジフルポケット

アメリカやカナダなど北米で一般的なじゃがいも(ポテト)の種類3つと特徴まとめ

世界に5,000以上の種類があるといわれるジャガイモ。

日本ではメークイン男爵(だんしゃく)などが人気ですが、たまに別の品種も見かけませんか?どのジャガイモにもそれぞれ特性があるのは皆さんもご存知かと思います。例えば、

■ メークイン
西日本で主流の煮崩れしにくい品種。ちみつな粘質。シチューやカレーの具なんかにはこちらが向いています。
(※岡山のスーパーで働いていた頃の経験ですが、本当に男爵じゃなくてメークインばっかり売れてました汗 割合でいうとメークイン 8割 / 男爵 2割 くらいのイメージ)

■ 男爵
東日本で主流の粉質のほくほく系品種。粉吹き芋やマッシュポテトなんかにオススメ。メークインに比べると、煮崩れしやすい。

■ きたあかり
果肉が明るい黄色。こちらも粉質のほくほく系。芽が若干赤いのも特徴。

■ インカのめざめ
粘質のじゃがいもで、栗っぽい風味が味わえる。南米アンデス原産

などなど!しかし、個人的にカナダやアメリカを含む北米では上記の品種は見かけたことがありません。その代わりに一般的に見かけるのが、以下の3種類です。

(カナダ・バンクーバーにあるUrban Fairというスーパーで撮影)

日本から北米に移住した方は特に「え、このじゃがいも初めて見た。煮崩れする系なんだろうか?それとも煮崩れしないやつかな?」と迷ってしまった経験もあるのではないでしょうか?

また、「まぁじゃがいもなら何でもいいか。煮たら食べられるし」という感じに購入している方もいるかもしれません(´;ω;`)ウゥゥ

そこで今回は、野菜ソムリエHiroが北米で主流のじゃがいも3種類について特徴などをまとめてご紹介します。

 

アメリカやカナダなど北米で一般的なじゃがいも(ポテト)の種類3つと特徴まとめ

早速紹介していくのですが、まず最初に知っておきたいことがあります。

日本では、メークインと男爵という2つの「品種」が主流ですが、北米では

1. ラセットポテト(Russet Potato)
2. イエローポテト(Yellow Potato)
3. レッドポテト(Red Potato)

という「3つのカテゴリー」のじゃがいもが特に人気なんです。

例えばラセットポテトには「Gold Rush」「Blazer Russet」という品種があったり、イエローポテトにも「Perline」「Yukon Gold」、そしてレッドポテトにも「Sangre」「HO 2000」など色んなじゃがいもが存在します。

なので、例えば野菜売り場で「Russet Potato」という表記だけでは厳密にはどの品種のラセットポテトなのかは分からないんです。そして、あくまで野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーの話ですが、それが当たり前になっています。

逆にファーマーズマーケットなんかに行くと、じゃがいもの専門店みたいなところもあって、そういったお店ではカテゴリー名ではなく、品種名がきちんと書かれています。

そこを踏まえた上で、以下北米で一般的な3種類のじゃがいもについて紹介します!

 

1.日本でいうところの男爵タイプ「ラセットポテト(Russet Potato)」

■ 見た目
他のジャガイモに比べて細長くて大きいことが多い、ザラザラした褐色の果皮

■ 特徴
でんぷん質が多い、日本の男爵に似ている、ソフトな食感でホクホク系、吸収性が高いのでバターやクリームとの相性が良い、イエローポテトに比べると煮崩れしやすいのでカタチを保つ必要性のある料理には向かない、他に比べると皮が少し厚い

■ 調理
ベークドポテト、マッシュポテト、フライドポテト等

■ 入手時期
ほぼ年中

■ 品種例
Russet Burbank(人気) / Frontier Russet / Centennial Russet / Russet Silverton / Umatilla Russet / Russet Norkotah / Russet Nugget など

まず最初は、北米で最も人気といわれるじゃがいも「ラセット」です。「Russet」という名前は、日本語でザラザラしたという意味で、芋の表面の特徴から来ています。(アメリカでは、アイダホ産のラセットポテトを「アイダホポテト」とも呼ぶようです)

果皮は黄土色でけっこう厚め、中は白色で、カタチだけでいうと日本のメークインと同じように細長いじゃがいもです。

でんぷん質が多くベーキングに最も適しているじゃがいもといわれ、厚めの皮はパリパリ、中はホクホクになります。また、フライドポテトなど揚げ物にもとても向いているじゃがいもです。

ラセットポテトの始まりは植物学者のルーサーバーバンク氏といわれています。(プラムとアプリコットを混ぜたプラムコットもバーバンク氏から生まれていて、すごい人です)

バーバンク氏が1880年頃開発した「Russet Burbank(ラセット・バーバンク)」は北米で超人気の品種で、ラセットポテトと聞くとラセット・バーバンクを想像する人も多いのではないかと思います。
(カナダでは1923年に登録。じゃがいもの中でも晩生の品種で、休眠期間が長く貯蔵性が良いことで知られています)

実は、マクドナルドのフライドポテトはラセット・バーバンクが使用されているって知っていましたか?

「世界最大のファストフードチェーンがあえてフライドポテトに採用している品種のじゃがいも」と聞くと、なんだか絶大な信頼感がありますよね(^-^;

(ウォルマートで購入したアルミホイルに包まれたラセットポテト)

ちなみに、カナダの大型スーパーなんかに行くとアルミホイルに既に包まれたラセットポテトが販売されていたりします。事前に洗われているので、そのままオーブンに入れるだけでベーキングポテトをつくることができます。

アツアツのラセットポテトにバターを染み込ませていただけば、最高のじゃがバターを楽しむことができます。オーブンに入れるだけで作れてしまうので、ずぼらな野菜ソムリエHiroもよく食べています(汗)

また、世界の食材を紹介しているメディア TasteAtlasの「世界の最も有名なじゃがいもトップ10(Top10 MOST POPULAR POTATOES in the world)」という記事でも、アイダホポテト(ラセット)が見事第1位にランクインしています。

 

2.日本でいうところのメークインタイプ:イエローポテト(Yellow Potato)

■ 見た目
ツヤのある黄色い果皮、サイズは中ぐらい程度が多い、品種によってカタチは違う

■ 特徴
果皮が薄い、クリーミーな味わい、若干甘味を感じる、煮崩れしにくい、ほぼ万能型(オールパーパス)といわれるじゃがいも、でんぷん含有量は中程度

■ 調理
ロースト、煮物、マッシュなど

■ 入手時期
ほぼ年中

■ 品種例
Yukon Gold(人気) / Bintje / Yellow Finn / Charlotte / Vivaldi / German Butterball / Sierra Gold / Orchestra / Perline / Baby Boomer

イエローポテトは色んな用途に使える便利なじゃがいもです。特にラッセルポテトに比べて煮崩れしにくいので、カレーやシチューなど煮物などに向いています。

また、ローストした際も外はパリッとした食感になり、中はふわふわした感じになるので、野菜ソムリエHiroはローストしたイエローポテトが大好きです♪(メークインに似た食感を求めるならこっちです)

(バンクーバーの八百屋で売られているユーコンポテト=ユーコンゴールド)

ちなみに、北米で一般的に見かけるイエローポテトの品種は「ユーコンゴールド(Yukon Gold)」だと思います。野菜売り場でも「イエローポテト」ではなく、「ユーコンポテト」「ユーコンゴールド」とプライスカードに表記されているのもよく見かけます。(なぜかユーコンゴールドだけ品種名がちゃんと書かれていることが多い・・・一体なぜ・・・)

ユーコンゴールドは1960年代にカナダ東部オンタリオ州 Guelph の University of Guelph で Garnet Johnston さんによって開発され、市場に出回るようになったのは1980年頃といわれています。(開発にはなんと30年近くが費やされています)

当初はユーコン川から取った「ユーコン」という名前でしたが、その見た目の色合いを表現するために「ゴールド」も足して、現在の「ユーコンゴールド」になったという説もあります。

(アメリカ・シカゴ旅行の際にスーパーで撮影。カナダ産イエローポテト)

また、カナダ政府のページを見ると、中生の品種で収穫量も多く、貯蔵性に優れた品種であることも分かりました。

基本的に万能型のじゃがいもですが、政府のページには「ポテトチップスづくりには向いていない」とも記されています。日本でもポテトチップスの原料はメークインや男爵などの生食用ではなく、加工用の品種が用いられているので、納得です。

先述した TasteAtlasの「Top10 MOST POPULAR POTATOES in the world」という記事でも、ユーコンゴールドが世界で有名なじゃがいもランキング第4位にランクインしています。

 

3. 赤い皮を活かした料理に:レッドポテト(Red Potato)

■ 見た目
赤く滑らかな果皮、カタチは品種によって異なる、中サイズが多い

■ 特徴
煮崩れしにくい、果皮が薄い、色を活かして料理に使われることが多い、ほぼ万能型(オールパーパス)といわれる、わずかに甘さを感じる

■ 調理
茹でたり蒸したりする料理、皮を含めたマッシュポテトやポテトサラダ、ベーキング

■ 入手時期
ほぼ年中

■ 品種例
Red Bliss(人気) / Red Gold / HO 2000 / Norland / Sangre / Pontiac

最後3つ目に北米で主流のじゃがいもといえば、レッドポテトです。大きなスーパーはもちろん、小さな食料品店でも扱われていることが多い印象を受けます。

持ち前の果皮の色を活かした料理に使われることが多く、個人的には皮ごと小さくカットしてガーリックソルトなどをパラパラかけてローストするのが好きです♪仕上げに乾燥パセリなど振りかけると、きれいな色合いです。

ちなみに、北米でどの品種が一番一般的なレッドポテトなのか知らなかったのでけっこうネットパトロールをして調べたのですが、100%確かな情報を得ることができませんでした。(スーパーなんかでもレッドポテトの品種名を書いているのを見たことが無い)

ですが、「Red Bliss」という丸みを帯びた品種が一般的であるという記述をいくつか信頼できそうなソースを見つけることができたので、参考までに英語ですが以下リンクを貼っておきます。

また、カナダ政府の「Canadian Potato Varieties – Descriptions」を見ると、Red Blissがリストに載っていない(アメリカだけの品種なのかな?)ので、ここではカナダ生まれの品種「Red Gold(↓)」を少しだけご紹介します。

引用: inspection.gc.ca

レッドゴールドは先述したユーコンゴールドと同じくカナダ東部オンタリオ州にあるGuelph大学で生まれた中生の品種です。1970年代に開発され、1987年に品種登録されました。赤い果皮に黄色い果肉を持っています。

収穫量は中レベルで、休眠期間がほかに比べて短いため、購入したらイエローポテトやラセットポテトより早めに使うのが良いかもしれません。しっとりした果肉が楽しめますよ。

(2020年5月2日にバンクーバーの八百屋で発見した新じゃがと思われるレッドポテト。普通のレッドポテトと区別して販売されていました。値段もちょっとだけお高め)

 

最後に:主流は3種類ですが、他にも「White Potato」「Fingerling Potato」「Purple or Blue Potato」など北米で人気のじゃがいもがあります

ちなみに、北米ではほかにも以下のようなじゃがいもがあります。↑の写真みたいな親指と人差し指でつまめる程度の小さなじゃがいものパッケージも人気っちゃ人気です。(そのままローストしたりできるので、切る手間もなくて楽!)

White Potato

イエローポテトがもうちょっと白っぽくなったタイプ。マッシュポテトやボイルにどうぞ。
 

Fingerling Potato

指の先みたいなカタチをした細長いタイプ。スチームやベーキングに最適。茹でてもOKです。

Purple or Blue Potato

ナッツみたいな風味があるといわれるタイプ。スチームやベーキングでいただきたいです。(個人的には特にナッツ風味と思ったことはない爆)

また、最後になりますが、品質の良いじゃがいもの選び方と保存方法をお伝えします。参考になれば幸いです。

■ 品質の良いじゃがいもの選び方
・傷やしわがないもの
・見た目より重さを感じるもの
・色が均一なもの
・果皮が緑色になっているものは避ける
・芽が出ていないもの

■ 保存方法
・通気性のよいところで管理、光に当てないように、冷暗所が良い
・紙袋や新聞紙で包む
・冷凍は不向き
・カットしたものはラップで包んで冷蔵庫の野菜室
・りんごと一緒に保存するとエチレンガスが出てじゃがいもの芽が出にくくなりますが、基本は芽が出る前に早く使いましょう

■おまけ:その他豆知識
・皮ごと調理すると栄養もたくさん摂れてオススメです
じゃがいもに含まれるビタミンCはでんぷんに包まれていて壊れにくいのも特徴です。茹でるときも皮ごとだとビタミンC流出が防げます
・ごはんよりも低カロリーです
・新じゃがは品種名ではなく、掘りたてのじゃがいものこと
・野菜ソムリエHiroが暮らすカナダBC州では30種類以上のじゃがいもがつくられている

ということで、アメリカやカナダなど北米にお住まいの方、ぜひ用途に合わせてじゃがいもを選んでみてください。良いポテトライフを~!(?)


ジャガイモの大百科 (まるごと探究!世界の作物) (日本語) 大型本 – 2020/1/22


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