野菜ソムリエ Hiro のベジフルポケット

ビンロウ(檳榔)について知っておきたいこと。発がん性 / 結婚式の縁起物

   

以前ベトナムのハノイを旅行した際に、たくさんのマーケットを訪れることができたのですが、現地のお店で野菜果物と一緒に売られていた以下のもの、皆さん何だか分かりますか?

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野菜ソムリエHiroも「何だこれは・・・?」と思っていて、お店の方に英語も通じないので、旅行中は誰にも聞くことができず終了・・・。その後SNSでフォロワーさんに尋ねてみると、アジア圏で知られる「檳榔(ビンロウ)」というものであることが分かりました。(皆さん、本当に物知り・・・)

調べてみると、檳榔(ビンロウ)の使い方や発がん性の健康被害なども興味深いものだったので、今回は檳榔(ビンロウ)についてまとめてみました。

檳榔ってどんな植物ですか?

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ビンロウ(檳榔、学名: Areca catechu)は、ヤシ科の植物。そう、写真の実は大きなオリーブのようにも見えますが、ヤシの実なんですね。

ベトナムの他にも中国やインドなどのアジア各国、英国などのヨーロッパ諸国、東アフリカの一部など広い地域で見られる植物です。台湾の檳榔(ビンロウ)畑の写真をSNSで見つけました。以下の写真を見ると、樹高が高く、幹が真っ直ぐ伸びているのが分かります。

そんな檳榔(ビンロウ)の若い種子、いわゆる「ビンロウジ(檳榔子、areca nut / betel nut)」が一般的に利用されています。

亜熱帯植物資源データベース武田薬品工業株式会社によると、種子は関節炎や打ち身、リュウマチ改善、駆虫、血圧降下、縮瞳作用などの目的で古くから薬用にも用いられます。

ちなみに、檳榔(ビンロウ)の果実は5、6cmほどの長楕円形で、オレンジ色から深紅色に熟すので、緑色の硬い実は未熟なものになります。


 

噛みタバコとしての檳榔(ビンロウ)

主な利用方法は、食べるというよりビンロウジを噛んで楽しむ「嗜好品」という扱いです。

野菜ソムリエHiroは、檳榔について調べているときに初めて「噛みタバコ」という言葉を知ったのですが、ビンロウジを噛むことで軽い興奮・酩酊感、清涼感が得られるということで、精神活性化というか中毒性があるようです。(ビンロウジの主成分はアルカロイドのアレコリン)

ちょっとした眠気覚ましにも使えるということで、肉体労働者や長距離ドライバーなどに愛好者が多いとか。

噛みタバコとしての使い方は、以下のようになります。地域によっては、甘草など異なったものを加えることもあるようですが、メインはキンマの葉、石灰、ビンロウジの3種です。

1. キンマ(コショウ科の植物)の葉に水で溶いた石灰を少し塗る
2. 未熟なビンロウの果実から種子(ビンロウジ)を取り出し,細かく切る or すりつぶす
3. ②を①のキンマの葉にのせて包む
4. ガムのように噛む
5. 噛んでいる間渋みが口の中に広がり、口の中に溜まる唾液はビンロウジの赤色に変わる。赤い唾液が溜まってくるので、それは吐き出す
6. 味がしなくなったガムと同じように噛み残った繊維質を吐き出す

ビンロウをつくっているところを撮影した動画もあったので、シェアします↓

 

ビンロウによる発がん性と赤い唾液による街の汚れ問題について

この噛みタバコとしてのビンロウ。噛むと唾液が赤くなり、利用者はこの唾液を吐き出す(飲み込むと胃を痛めるそう)ので、道路に吐き出した後に乾くと血痕のように見えます。調べてみると、そのために道路が汚れ街の景観を損なっていると問題視されていました。(Wikipediaには、退散では道路にビンロウジを噛んだ唾液を吐き捨てると罰金になると記されています)

また、顔を殴られて口内で流血したかのように歯を真っ赤に染めているような顔や、血を含んだかのような色合いの唾液を吐いている様子を実際に見たことがある方もいるかもしれませんが、想像するだけでもあまり気持ちの良いものではないかもしれません。

以下の動画では、子どもの頃からビンロウを使用している青年も登場。ビンロウの使用で歯が赤くなっているのが分かります。(唾液はペットボトルに入れているようでした)英語のキャプションも付いているので、英語が分かる方はぜひ一度見てみてください。

 

そんなビンロウは発がん性の可能性が指摘されており、Wikipediaには「死の実と呼ばれています」と書かれていました。

長期的に石灰を含んだビンロウを噛むことで、赤くなった唾液とともに歯にこびりつき、歯が黒くなったり、硬いビンロウを噛むことで歯が悪くなったり、あごが変形したりするようです。World Health Organization(WHO)もビンロウの危険性について2003年にニュースページで取り上げていました↓

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引用: World Health Organization

上記のWHOの内容によると、1985年の以前の評価では、ビンロウをタバコと一緒に噛むと人間に発がん性があると判明していましたが、新しい評価ではさらに、タバコ無しでビンロウの実を噛むことも人間に発がん性があると結論付けています。

ビンロウの発がん性について広く知られている例でいうと、中国で著名な男性歌手である傅松(Fu Song)さんがビンロウを長期で使用していたためか口腔がんを患い、36歳の若さで亡くなりました。口腔がんのせいで顔の頬が変形するほどの腫瘍ができた姿を動画で発信し、ビンロウの危険性を訴えていました。

以下の台湾のニュースでも、ビンロウと癌の関係について語られています。

国によってはビンロウの愛好者がかなり多く、根強い人気を誇っています。その危険性から都市部などでは廃れてきている地域もあるようですが、以下のグラフを見ると、アジア太平洋地域全体で消費量が増えているようです。

台湾ではビンロウの健康に対する影響などが保健体育の教科書に載っていたことを取り上げている方もいました↓

 

死の実といわれるビンロウが結婚式に用いられる大切なものとしての側面も

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上の写真にもあるように、野菜ソムリエHiroはベトナム・ハノイのマーケットでリボンが付いたビンロウを見つけました。どう見ても、噛みタバコにする用とは思えませんよね。

そこでX(Twitter)で教えていただいたのが、ビンロウは結婚式に用いられる側面があることでした。

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調べてみると、Wikipediaにはビンロウジは古来から高級嗜好品として愛用されてきた歴史があり、ビンロウジとキンマは夫婦の象徴とされ、今でもインド、ベトナム、ミャンマーなどでは、結婚式に際して客に贈る風習があるとのことです。

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なので、ハノイで見かけたビンロウはどうやら噛みタバコではなく、結婚式のためのものだったようです。一方で死の果実とも呼ばれるビンロウが、もう一方では縁起物として利用されているのが、個人的に面白いと感じました。

 

まとめ:ビンロウを試してみたい方は、その危険性を知った上で利用してください

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今回はベトナムのハノイで出会ったビンロウについてまとめてみました。日本や北米だけで暮らしていたら知らなかったであろうものなので、個人的にも調べていて非常に勉強になりました。

嗜好品としてだと、タバコと同じく使いたい人は使うという感じだと思うのですが、健康面での危険性がどのくらい現地で広まっているのか気になるところです。

この記事を見ている皆さんの中にはもしかしたらビンロウを愛用している方もいるかもしれませんし、ビンロウに興味があってこれから試してみたいという方もいるかもしれませんが、その危険性を納得の上での利用をオススメします。

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