皆さん、コズミッククリスプ(Cosmic Crisp)という新しいリンゴが2019年12月1日から流通開始になることを知っていますか?
実は野菜ソムリエHiro、世界中の果物の中で今一番コズミッククリスプが気になっているのですが、その理由は「リンゴ界のトップに立つ可能性のあるリンゴ」と形容されているからです!
今回は、ワシントン州生まれの「コズミッククリスプ」が一体どんなリンゴなのかを5つの項目に分けてお伝えします。
この記事の目次
はじめに知っておきたいこと:アメリカ・ワシントン州はリンゴの一大産地
コズミッククリスプについて知っておきたい5つのことをお届けする前に、まず触れておかないといけないことがあります。それはコズミッククリスプが生まれたアメリカ・ワシントン州について。
皆さん、アメリカ西海岸最北部のワシントン州はリンゴの一大産地だと知っていましたか?
ワシントン州は1920年代から国内のリンゴ生産をリードし続けていて、米国で栽培されているリンゴの約42%を生産しています。(そのうち 60% は生での消費、残りは加工などに回されています)
そのためワシントン州はりんごを「州の公式果物」に認定していて、ワシントン州で1年間に収穫したりんごをすべて並べて配置すると、29回地球を一周する長さになるといわれています。
Washington Apple Commission によると、ワシントン州では主力として8種類のリンゴを栽培していて、その他に様々なリンゴも併せて生産されています。また、機械での収穫は行われていないので、全部手摘みです。
ちなみにアメリカ全体では、2,500種類ものリンゴの栽培が確認されています。
レッドデリシャス / ガラ / ふじ / グラニースミス / ハニークリスプ / クリップスピンク / ゴールデンデリシャス / ブレイバーン
■ その他栽培されているリンゴ
アンブロシア / オータムグローリー / ジョナゴールド / ブレーバーン / ジャズ / エンビー / レディアリス / オパール / パシフィックローズ / ローマ / シュガービー など
そんな中、上の収穫量グラフを大幅に変えるかもしれない、将来最も多く栽培されるであろうと言われているのが、今回ご紹介するコズミッククリスプなんです。
ワシントン州が生んだ驚くべきリンゴCosmic Crisp(コズミッククリスプ)知っておきたいこと5つ
それではここから、ワシントン州が生んだ驚くべきコズミッククリスプについて知っておきたいことを5つに分けてご紹介します。
1. ワシントン州が20年の歳月を経て解き放つ新品種のリンゴは 世界で最も有名なリンゴになる可能性大
記事冒頭でコズミッククリスプを「新しいリンゴ」とお伝えしたのですが、実は研究開始から2019年12月の流通に至るまでには、なんと20年以上の歳月が費やされています。
上の動画では、長年コズミッククリスプの研究に努めたBruce BarrittさんとKate Evansさんがコズミッククリスプの魅力などを語っています。(※英語)
1997年からワシントン州立大学の世界レベルの Tree Fruit Research and Extension Center で育種が始まり、病気に耐性があるといわれる「エンタープライズ(Enterprise)」と北米で大人気のフジに似た食味を持つ「ハニークリスプ(HoneyCrisp)」を掛け合わせて誕生しました。
「WA38」が本来の品種名で、コズミッククリスプはブランドネーム。ちなみに遺伝子組み換えではありません。(NON-GMO)果実は大きく、「フジ」に似ていて「ガラ」より大きく、平均赤道直径8.4 cm、軸長7.9 cm程度の丸い円錐形です。
名前の由来は、ワインレッドの濃い果皮色に、点々模様(果点:かてん)が銀河を彷彿させると形容されたため。写真で見る限り、日本のジョナゴールドや紅玉なんかに近い感じでしょうか。
コズミッククリスプは2017年春に初めて商業的に植えられて以来、現時点ではワシントンを拠点とする農家のみが栽培できる品種になっています。(10年間エクスクルーシブ)つまり、ワシントン州以外のリンゴ農家は栽培することができません。
生産地のひとつであるワシントン州のウェナチーでは9月下旬から10月上旬に熟し、収穫量も申し分なく味わいも最高レベルのリンゴといわれるコズミッククリスプは、「世界の頂点に立つリンゴになる可能性がある」と各所で言われています。(歯ごたえが良い × 甘味が強い × ジューシーの3拍子が揃っているため)
ニューヨークタイムズ誌では、「将来の最も有望で重要なリンゴ」と形容していて、カナダのNHK的存在のCBCの記事の中でも、投資家が「コズミッククリスプは世界で最も有名なリンゴの品種になるかもしれない」と語っていました。
2.驚異の保存期間。家庭での冷蔵保存で最低4ヶ月(最長6ヶ月)、CA貯蔵のような特別な冷蔵保存なら1年間は鮮度を保てる
普通リンゴの貯蔵を自宅でしようとしても1年間は無理なのは、皆さん常識の範囲内でご存知のはず。
ただ、CA貯蔵(英語だと Controlled Atmosphere)といって、長期保存が可能な特殊な冷蔵庫を利用することで、通常秋頃に収穫されるリンゴが翌年の夏頃まで出回る仕組みが世界各国にできています。
CA貯蔵されたリンゴは、普通の冷蔵庫の約2倍は鮮度を保てるといわれていて、その理由はリンゴの呼吸(呼吸することで鮮度が落ちる)を最低限まで抑えるためです。
ただ、日本もそうですが、春~夏頃のリンゴは品質が多少落ちていたり、芯黒といって外見からは分からない病気になっていることもしばしば。リンゴをほぼ毎日食べている野菜ソムリエHiro(大のリンゴ好き)も、夏頃は新物のリンゴが出るまでお預けにしていることもよくあります。
しかし、コズミッククリスプの場合はCA貯蔵のような特殊な冷蔵庫に入れれば、約1年間鮮度をほぼ落とさず保つことができる(普通の冷蔵貯蔵でも最低4ヶ月・最長6ヶ月保存可能)という研究結果がワシントン州立大学から出ています。(参照:2019 Storage Recommendations for WA 38)
研究結果を簡単にまとめると、以下のようになります。
■ 保存期間とともに酸性度が低下して、甘味がより強くなった
■ 普通の冷蔵貯蔵でも最低4ヶ月間は鮮度を保つことができると自信を持って言える(最大6ヶ月まで鮮度が保てる)
■ CA貯蔵であれば、最低10か月は鮮度が保てる
ちなみに、どこかのサイトに「家庭の冷蔵庫で1年間保存可能」と書いていたので、実際にCosmic Crisp AppleのFacebookページで「家庭の冷蔵庫で1年間保存できますか?」的なコメントしてみたのですが、以下のような返事がきました。
私たちが冷蔵貯蔵について話すとき、通常リンゴが店舗に出荷される前のリンゴが待機する制御された貯蔵施設を指しています。そうは言っても、リンゴは自宅の冷蔵庫の野菜室に保管する必要があります。 リンゴは室温貯蔵の場合、冷蔵庫貯蔵より6〜7倍速く熟すことをご存知ですか?
つまり、家庭での1年間の保存はやっぱり無理ということですね~。
でも、通常の冷蔵保存でも最低4ヶ月鮮度を保てるってすごーーーーーーーいことです。そして、CA貯蔵されたコズミッククリスプなら1年以上鮮度を保てるということは、1年間そのままの品質でリンゴを楽しめるということ!
貯蔵期間が長いのは何も消費者にだけ良いことではなく、生産者や小売にとっても品質の良いリンゴを長期間販売しやすい(=ロスが少ない)メリットがあるかと思います。(カットしても酸化が遅いのも魅力とのこと)
コズミッククリスプ、もはやリンゴ革命と言ってもいいのではないでしょうか?
3. リンゴの歴史の中で最も高額かも。5年分のマーケティング予算は10億円以上!ピンクレディー(Pink Lady Apple)を世間に浸透させたマーケティングチームが宣伝担当
既にコズミッククリスプがすごいリンゴであることは十分に伝わったかと思うのですが、どんなにすごいリンゴでも世間に知られなければ意味がありません。
そこで、ワシントン州立大学は「WA38(元々の品種名)」を世界に広めるため、過去に「Pink Lady」を世間に広めた Proprietary Variety Management (PVM) と5年間のマーケティングの契約を交わしています。 (ピンクレディーは北米で人気のリンゴの一種で、ピンク色の果皮が特徴)
そして、商品名を「コズミッククリスプ(Cosmic Crisp Apple)」に統一。キャッチコピーを「Imagine the Possibilities(可能性を想像)」にして、農家とマーケティング会社が一丸となって、世界にコズミッククリスプを浸透させるための活動が日々行われています。
その気になるマーケティング予算、なんと1,050万ドルです。(りんご1つにかけるマーケティング費用としては世界最大ではないかと言われています)アメリカドルを日本円に換算してみると、2019年11月13日現時点で 1,141,464,680円。
つまり、コズミッククリスプを世界に広めるために、日本円で約10億円以上が投入されているわけ。(10億・・・・・!)
20年以上かけてついに販売までこぎつけたコズミッククリスプ。ワシントン州はコズミッククリスプが世界中の市場を席捲することに賭けている感がビシビシ伝わってきませんか?
4.年々生産量が増える見込み。2020年には200万箱が市場に投入
引用: cosmiccrisp.com
ワシントン州の Okanogan(地図1)、Lake Chelan(地図2)、Wenatchee(地図3)、Columbia River(地図4) と Yakima Valley(地図5) という5つの地域で栽培されているコズミッククリスプですが、今後生産量が年々増える計画となっています。
業界人たちは、コズミッククリスプの生産量は5年以内にピンクレディーとハニークリスプを上回ると予想しているほどです。以下の表をご覧ください。
初めての本格的な出荷となる2019年12月で46万箱、翌年2020年には200万箱以上が市場に投入される見込みです。さらに2021年にはその2倍以上となる 560万箱、2026年には2,100万箱に達するという計画が立てられています。
では、どこでコズミッククリスプが手に入るようになるのでしょうか?
5.販路は?カナダは?日本でもコズミッククリスプは手に入るのか調べてみた
生産量の推移計画を見て、ワシントン州をはじめとするアメリカでは、数は少ないものの、2019年度または2020年度中に手に入る可能性は十分にありそうですよね。
しかし、「ん?これだけ生産されるのであれば、アメリカ近くのカナダや我らが日本でも手に入るかな?」と思った方もいるのではないでしょうか?
ここでは、カナダと日本でコズミッククリスプが手に入るか調べてみました。
カナダでは少量輸入予定とのこと
カナダ在住の皆さんに朗報です。
CBCの記事によると、現在カナダ向けのパッケージが開発されており、少量がワシントン州からカナダに輸出されるとのことです。
つまり、野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーでも、もしかしたら近いうちにコズミッククリスプをトライできるチャンスがあるかもしれません。(よっしゃあああああ!!!)
また、園芸家でコズミッククリスプの開発に従事したBruce Barrittさんは、カナダの消費者は2020年秋頃からコズミッククリスプを購入できるようになるのではないかとも語っています。
野菜ソムリエHiroが暮らすカナダBC州バンクーバーでは、既にCosmic Crispがスーパーや八百屋で普通に手に入るようになっています!お店でよく見かけるレベルです。
日本ではまだまだ時間がかかりそう
続いて日本ですが、ネットには情報が無かったので、Cosmic Crisp AppleのFacebookページで再度直接聞いてみました。
(意訳)(日本でもコズミッククリスプが食べられるようになったら、なんて)素敵な考えですね!コズミッククリスプは、1~2年後に香港なんかで購入できるようになるかもしれません。日本にも近い場所で販売できるようにしたいのですが、あと数年はかかりそうです。
ということで、日本在住の方はコズミッククリスプが上陸するまで、もう少し時間がかかりそうです。「そんなの待てない!」という方は、アメリカ旅行の際(バンクーバーから近いシアトルもワシントン州です)に探してみるのもいいかもしれません。
まとめ:コズミッククリスプ(Cosmic Crisp Apple)の販売開始は2019年12月1日から。世界中で人気になるかどうか今から楽しみ
ということで、いかがでしたか?
この記事を通して「コズミッククリスプを食べてみたくなった!」という方が増えたら、野菜ソムリエHiroは本望です。
個人的にも2021年くらいにはカナダでも多く出回りそうな予感がしているので、今から楽しみにしています。皆さんもコズミッククリスプを手に入れることがあれば、ぜひ感想をシェアしてくださいね。
10年後には世界中でコズミッククリスプが手に入るのではないかと個人的に思っています( ◠‿◠ )
【Cosmic Crisp 公式サイト】【Washington Apple Commission 公式サイト】【貯蔵期間についての調査 / ワシントン州立大学】
記事:CBC
The fruit of 22 years’ labour: Highly anticipated Cosmic Crisp apple set for launch
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