野菜ソムリエ Hiro のベジフルポケット

桃(知識のまとめ)

      2016/05/09

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(写真は日川白鳳)

品名


peach

植物学上の分類

バラ科サクラ属

歴史

中国の黄河上流地域に広がる標高600-2000mの高原地帯が原産地といわれ、その栽培歴は6000年以上とされる。しかしながら、ヨーロッパでは原産地はペルシア(現在のイラン)であると考えられている。これは、モモが紀元前にシルクロードを通って中国からペルシアに渡り、栽培されていたことによる。

16世紀にはメキシコやアメリカにも伝わった。
中国では、美しい花を咲かせ果実も美味で、種や葉は薬になることから「不老不死」を授ける果樹として知られる。
弥生時代に日本に伝わる。古事記にも桃が記述されている。

「モモ」という言葉は、日本では「木になる実」を意味し、古くから果物の総称として用いられていた。
現在でも、スモモやヤマモモ、コケモモといったぐあいに、モモ以外の果実にまでモモという名がついているのは
その名残
だといえる。

明治初期から日本で生食用として栽培されており、現在栽培されているものはその頃に中国や欧米、ヨーロッパから導入された品種を改良したもので、ほとんんどが日本オリジナル品種となっている。
生で食べられる品種は、中国から入ってきた水蜜系を品種改良したものが多くある。
世界中の品種を合わせると3000を超えるという。日本だけでも100以上の品種がある。

品種

品種群には

1「ヨーロッパ系(ペルシャや地中海沿岸地域で改良された品種)」
2「華北系(天津水蜜桃、肥城桃、黄肉桃、ネクタリンなど)」
3「華中系(上海水蜜桃、バントウなど)」

の3つがある。

日本での栽培に適していたのは上海水蜜桃で、国内品種のほとんどはこれを母体にしているらしい。

また、果実の柔毛の有無によって

1「有毛(ケモモ)」
2「無毛(ネクタリン)」

に分けられる。

生食用として多く流通する果肉が白い白桃(果汁が多く酸味が少ない)と比べ、「錦(にしき)」「缶桃5号」「缶桃14号」などの果肉が黄色い品種である黄桃はあまり生食には向いていないとされ、(果肉が硬く、酸味が強く、加熱しても煮崩れないのが特徴)大半は加工され、シロップ漬けといった缶詰にされる。

白肉の「もちづき」も缶詰用ももである。外国産の安価な加工品に押され、東北地方で栽培されている程度。
(岡山の黄金桃は生食用である。ヨーロッパでは黄色種も珍しくない。有袋栽培では果皮が黄金のような鮮やかな黄色になり、無袋では赤味がかかる。)

(早生種)
・ちよひめ ・日川白鳳 等
(中生種)
・白鳳 ・大久保 ・浅間白桃 ・清水白桃 ・山根白桃 ・あかつき 等
(晩生種)
・川中島白桃 ・白桃 ・ゆうぞら ・黄金桃 等

ネクタリンは、毛のない桃。白桃より少し酸味が強い桃で、濃厚な甘みが魅力である。
食生活の欧米化とともに需要が増えている。
欧米では丸かじりしやすい無毛の桃や、風味の強いもの、果肉と核が離れやすいもののほうが好まれる。
観賞用のモモはハナモモといわれる。

産地

世界的な生産量をみると中国、イタリア、アメリカ、スペインが多い。
都道府県別収穫量ベスト3は、山梨、福島、長野。岡山でも有名である。
缶詰など加工製品はアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなど
から輸入されている。

時期

大半の桃は6月から8月に旬を迎える。品種によって出回り時期は様々である。

見分け方

うぶ毛があるのは鮮度のよい証拠
傷がついていないもの、甘い香りが漂っているものを選ぶ
くぼんでいるあたりが青くないもの。少し紅色になっていても、ヘタのまわりが
緑がかっているものは未熟。

縦、横のつい合いがよいもの。

栄養

10%あまりの糖があり、糖分の7割はショ糖。ほかは果糖やブドウ糖。
主な香り成分はγ-ドデカラクトン。渋み物質はポリフェノール。
果肉中にはたんぱく質、脂質、糖質、クエン酸やリンゴ酸(疲労回復)などの有機酸のバランスがよい。ビタミン、ミネラルは特に目立ったものはないが、その栄養のバランスのよさから、乳幼児やからだの弱った人にも適する「人に優しい果物」といえる。

血圧を下げる効果のあるカリウムと食物繊維の働きで、便秘解消の効果が期待できる。
カテキン(抗酸化作用が強い)などのポリフェノールも含まれる。
紅色の成分はアントシアニンである。

食物繊維(100g中1.3g)として水溶性のペクチン(コレステロールの上昇を防ぐ)と不溶性のペクチン(便のかさを増やして便秘を解消したり、大腸がんの予防になるとされる)の両方を豊富に含む。
カリウムも多い(100g中180mg)。そのほかに二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解してくれるナイアシン、細胞がガン化するのを防ぐビタミンEを比較的多めに含んでいる。

果肉の白色系には、フラボノイドというポリフェノールが多く含まれ、黄色系にはカロテンが多い。紅色系にはアントシアニンが多い。いずれも抗酸化作用がある。

最近では、インスリン(糖尿病を予防するホルモン)を活発にする作用があるといわれ、桃が予防につながるという見方もある。

料理

桃の皮を簡単に剥くには、沸騰したお湯に10秒入れ、すぐに氷水にひたせばOK。
ジャムやコンポートをつくるときは、レモンの酸味を加えると茶色く褐変するのも防げる。生桃の褐変は薄い食塩水につければ防ぐことができる。
桃を豚肉などと一緒にオーブンに入れてグリルにしても美味しい。

シャーベットにすると、おいしさをそのまま保ちながら長期保存もできる。(皮をむいた桃をピューレ状にして、レモンの絞り汁とシロップを加え、トレイに移して冷凍庫へ。)

バターソテーにしても美味しい。洋食のソースの隠し味に。
便秘で悩んでいる人は、ヨーグルトと一緒にとると、効果的である。

保存

日持ちしない果物である。熟しているものを冷蔵庫に入れても2日以上たつと
甘みが失われるといわれる。早めに食べるのがベスト。
冷蔵の際には、紙袋に入れるか新聞紙でくるむ。熟していないものを冷蔵庫には入れないこと。
0℃で約10日、5℃で5日、20-25℃で2日が限度。

ポイント

・リンゴ酸、クエン酸を多く含むから夏ばてにぴったり
・食物繊維のペクチンを豊富に含むから便秘の人におすすめ
・たっぷりの果汁にとろける食感
・食べる2時間前に冷蔵庫に入れて
・甘さのわりにエネルギーは高くない。可食部100g中40kcalである。

その他情報

・桃の葉に含まれる成分が湿疹やあせもに効くとされ、古くから乾燥した葉をお風呂に浮かべた桃湯が人気。生の葉なら約500gをお風呂に入れたり、患部にこすりつけると良いとされる。
・蕾(花)を乾燥させて利尿剤や便秘剤、種を煎じて虫下しに使用された。
・扁桃炎や口内炎には煎じた液でうがいをすると良い。
・寝汗を止めることが経験的に知られており、バセドウ病をはじめ、暑がりの人に適した果物である。

・種子は漢方では「桃仁(とうにん)」と呼ばれ、血液の循環をよくする作用があり、女性では生理不順や肩こり、頭痛、美容剤の成分として使われる。家庭では桃仁5gを煎じて飲むとよいそう。
・開花直前のつぼみを白桃花と言い、中に含まれるケンフェロールは利尿作用や緩下作用があるので、1日3-5gを煎じて飲むと効果がでるそう。
・1個=約200g
・降雨量で品質が作用される。
・理想の土地像を意味する「桃源郷」は、中国で昔からある言葉。長寿の実の象徴・邪気をはらう仙果として親しまれている。

・モモは産地変遷といって、時代とともに産地が移動する。
昭和初期の主産地は「神奈川、岡山、広島」の順であったが、その後は「岡山、神奈川、愛知」の順になり、さらに「福島、 山梨、岡山」となった後、現在は「山梨、福島、長野」の順になっている。

・日本での生産量の8割は生食用である。

 

Hiroのメモ書き

その栄養面から「人に優しい果物」という記述が印象に残りました。また、日本と海外では桃に対する嗜好性が違うのも面白いと思います。

時代とともに産地が移動するというのも、とても面白いですね。

「桃といえば岡山」という個人的なイメージがあるので、生産量も1位か2位かと思っていましたが、現在はそうではなく、昭和初期には生産量がトップ3に入っていたんですね。でも岡山県民として、ちょっと悔しくもある(笑)

桃の湯剥きについては、以前知り合いの方が教えてくださってびっくりしたことを覚えています。
「生で食べるもの」という勝手なイメージがあったり、皮は手でつるんと剥くことができると思っていたので、湯剥きできれいに皮を取ってコンポートにしたりするなど頭になかったのでした。

品種の違いによる甘みや酸味など味の違いを理解するのは、ものすごく大変だと感じています。良い覚え方があればいいのだけど。。。まだまだ桃について学ぶことが多そうです。
 

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