カナダやアメリカなど北米で手に入るさつまいも4種類の違いを解説&食べ比べた感想
2024/05/20
世界中で大人気の野菜の一つといえば、さつまいも。ヒルガオ科で、中南米が原産ではないかといわれています。
皆さんご存知のとおり、日本では調理することでスイーツのように甘くなるさつまいもが人気で、最近は「安納芋」「紅あずま」「シルクスイート」など様々な品種を見かけますよね。
その一方で、カナダやアメリカなど北米ではさつまいもは「Sweet Potato」または「Yam」という名前で出回っているのが一般的なので、品種名(orブランド名)で販売されているのを見かけることはそこまでありません。
(※Sweet PotatoとYamの違いは以前記事でまとめました)
ただ、北米にお住まいの方で「野菜売り場にさつまいもが何種類かあるけど、違いがいまいち分からないので、いつも気分で購入している」という方も実は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、カナダやアメリカで一般的に見られるさつまいも4種類の違いについてまとめてみました。
それぞれどんな味なのかも、炊飯器で同じ時間だけ蒸して改めて食べ比べしてみたので、感想をあわせてお届けします。
(炊飯器のスチーム機能で蒸す前の状態)
この記事の目次
1. アメリカで最初に商業的に栽培されたといわれるホクホク系
「クリーム色果皮・クリーム色果肉のさつまいも」(Sweet Potatoとよく呼ばれる)
はじめは、16世紀に米国で商業的に栽培された最初のサツマイモといわれているクリーム色果皮のさつまいもです。個人的に北米のさつまいもの中で一番安い or オレンジ色果肉のさつまいもと同程度の価格の印象があります。(※あくまで個人的に今まで売り場を見てきた感想ですが・・・)
やや滑らかなクリーム色の果皮が特徴で、年中出回っていて、野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーではアメリカ産のものをよく見かけます。
果肉は調理前はクリーム色で、調理すると薄めの黄金色になります。マイルドな甘みでシンプルな味わいのさつまいもなので、揚げ物やマッシュポテトなど多くの料理に向いています。
また、北米の白じゃがいも的なホクホク感があります。よく「firm and dry」と表現されています。
クリーム色果皮のさつまいもには「Hannah」などの品種がありますが、お店では「Sweet Potato」とだけ表記されていることが多いです。
たまにお店によっては Yam と名前が付いている場合もありますが、Yam(ヤム芋)は間違いで Sweet Potato が正解です。ちなみに Hannah は、「Sweet Hannah」や「Yellow Hannah」と呼ばれたりもします。
実際に食べてみた感想
実際にクリーム色果皮のさつまいもを蒸かして食べてみた感想は、やっぱりマイルドな甘みでした。オレンジ色果肉のさつまいもや日本のさつまいもと比べても主張が強くないので、どんな料理にも合いそうだと思いました。
オレンジ色果肉のさつまいもと比べて、果皮が薄くて柔らか。果肉の色は日本のさつまいもにとても似ていました。
甘さ ★★☆☆☆(2)
ホクホク感 ★★★☆☆(3)
2. 水分量多めでねっとり系
「銅色果皮・オレンジ色果肉のさつまいも」(Yamとよく呼ばれる)
果皮が銅色で果肉がオレンジ色のさつまいもは北米で一般的に Yam と呼ばれています。ただ、Yam は日本語でヤム芋でさつまいもとは全く違う野菜です。
なぜ Yam と呼ばれているかというと、オレンジ色の果肉のさつまいもを売り出す際にクリーム色果皮のさつまいもと差別化するために、マーケティングとしてわざと名前を変えて Yam として宣伝されたため、今でも多くのお店で Yam として販売されています。
バンクーバーの青果コーナーに行くと、 Yam と Sweet Potato と名前が混合した状態で売られていることが多いです。
クリーム色のさつまいもとは見た目も味わいも結構異なります。銅色の果皮はちょっとざらざらしていて、そのまま切ってみると、美しいオレンジ色の果肉が顔を出します。調理するとオレンジ色の果肉はさらに濃くなるイメージで、美しいです。
オレンジ色果肉のさつまいもで最も一般的な品種は「Beauregard」「Garnet」や「Jewel」がありますが、見た目だけでは判別が難しいです。お店で品種名まで出ていることは、そこまで無いかと思いますが、個人的にWhole Foods Marketは品種名を表記して売っているイメージです。
クリーム色のさつまいもと同じく一年中出回っていて、バンクーバーではアメリカ産のものをよく見かけます。水分量が多いさつまいもで、ねっとりとした食感なので、日本でいうところの安納芋的な感じかもしれません。
最初に紹介したクリーム色果皮のさつまいもより甘くて風味も強いなので、人気があります。バンクーバーのお店で出されているヤムフライズ(フライドポテトのさつまいも版)はいつもこのオレンジ色果肉のさつまいものイメージで、外側はパリッとしていながらも、果肉の食感はしっとりしていて人気です。
北米の感謝祭(サンクスギビングデー)で食べるものとして Candied Yam がよく知られていますが、このオレンジ色果肉のさつまいもが使用されています。その他にも、ダイス状にカットしてローストした後サラダに入れると彩りも良くなりますよ。
実際に食べてみた感想
個人的には、栗っぽいというよりはかぼちゃみたいな風味の甘さだと思いました。ちょっと癖というか、ほのかに土っぽさもある感じので、好き嫌いも分かれるかもしれません。
歯応えも他のさつまいもに比べてかなり柔らか&しっとりな感じで、「一番風味が強いさつまいもだなぁ」と感じました。また、皮はクリーム色果皮のさつまいもより厚め&固めでした。
甘さ ★★★☆☆(3.5)
ねっとり感 ★★★★☆(4)
3. ホクホク系で甘みも十分。日本の品種をアメリカで改良
「赤紫色果皮・クリーム色果肉の日本さつまいも」(Japanese Sweet Potato)
日本にお住まいの皆さんは驚くかもしれませんが、アメリカやカナダで日本のさつまいもは大人気です。日本でよく見かけるような赤紫色果皮のさつまいもが「Japanese Sweet Potato」という名前で一年中売り場に並んでいます。
ただ、日本のさつまいもといっても日本産ではなく、野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーでよく見かけるのは、アメリカ産の「Japanese Sweet Potato」です。
カナダに8年以上暮らしていますが、残念ながら品種名が書かれて販売されているのは一度も見たことがありません。
Specialty Produceによると、アメリカでの日本のさつまいもの需要増加に伴い、アメリカの育種業者は貯蔵性が高く、病気に強く、そしてより風味の良い改良版といえる日本の品種を開発しているとのことで、「Kotobuki」「Murasaki」「Boniato」などがあるようです。
日本で見かけるさつまいもはカタチも均一で見た目も素晴らしいものが多いかと思うのですが、北米で見かけるものはカタチも千差万別で、まるまるとしているものやゴツゴツしているもの、ぐにゃぐにゃ曲がったものなどが見られます。(土壌の違い??理由は不明)
また、Japanese Sweet Potatoは他のさつまいもよりお値段が少し高めなことが多いなのですが、その分甘みも強く、北米在住日本人だけではなく多くの人に愛されている印象です。
野菜ソムリエHiroがよく購入するさつまいもも、この Japanese Sweet Potato です。調理例としては、やっぱり焼き芋のようにローストして食べるのが個人的に好きですが、調理後の糖度も高いので、スイーツづくりにも向いています。
実際に食べてみた感想
蒸かして食べてみたときの感想は、栗っぽい風味で、クリーミーな味わい。他のさつまいもよりも甘みがやはり強いかと思いました。
クリーム色果皮のさつまいもや紫芋より明らかに甘く、オレンジ色果肉のものは同じくらい甘さもありますが独特の風味が強めで少し癖があるイメージなので、この日本のさつまいもが個人的に一番食べやすいと改めて感じました。
ちなみに、Japanese Sweet Potatoの食感はホクホク系です。調理前の果肉はクリーム色ですが、調理後は薄い黄金色に変化します。少し口の中に繊維が残る感じで、皮には若干苦味がありました。
日本人としてやっぱり安心できる味わいです。
甘さ ★★★☆☆(3.5)
ホクホク感 ★★★☆☆(3)
※日本で食べていたさつまいものクオリティに比べると、個人的に物足りなさは否めない・・・なので、星3.5つとさせていただきましたm(__)m
4.素朴な甘さのホクホク系。紫色を活かした料理に
「くすんだ紫色果皮・鮮やかな紫果肉の紫芋」(Purple Sweet Potato)
北米でも紫色の果肉のさつまいもが出回っています。上の写真のようなくすんだような紫色の果皮で、果肉は人工のものかと思うような美しい紫色が特徴です。
基本的に「Purple Sweet Potato」として出回っているため、こちらも品種は不明。(品種によって色合いと味も少し異なるかと思います)
ブランド紫芋としては、ノースカロライナ州ストークス郡で誕生した紫芋「Stokes Purple®」がありますが、バンクーバーでは個人的に見たことがありません。
品種によって差がありますが、果肉はホクホク系で、ほんのりとした甘さのものが多いかと思います。美しい色合いを楽しむために、スイーツづくりにも人気。紫色のタルトはもちろん、スイートポテトにも使われます。また、見た目もちょっとビックリするかもしれない紫芋のポタージュも可能です。
紫芋を切ってみると白い縞が見えるときもありますが、調理すると濃い紫色に変わります。(蒸かしたときの写真↓)
実際に食べてみた感想
アメリカ産の紫芋を食べてみたときの感想は、ホクホク系の食感が強く、口の中に繊維が少し残るような感じでした。
また、クリーム色果皮のさつまいもを含め他のさつまいもに比べて甘みが少なめで淡泊な味わいかと思いました。でも癖が無く果皮も薄かったので、個人的にすごく食べやすかったです。
甘さ ★☆☆☆☆(1.5)
ホクホク感 ★★★★☆(4)
ハワイアンスイートポテト(Hawaiian Sweet Potato)について
ちなみに、北米では果皮がクリーム色で果肉が紫色の「ハワイアンスイートポテト(Hawaiian Sweet Potato)」も年中出回っています。(Hawaii Purple Yamという呼び名も)
このハワイアンスイートポテト、日本で見られる紅芋にそっくりということで少し調べてみると、「Okinawan Sweet Potato」とも呼ばれていて、日本からハワイへ移民した方が現地に持ち込んで人気が出たことから、ハワイアンスイートポテトとも呼ばれるようになったそうです。
(Hawaiian Sweet Potato)
バンクーバーの場合、日本産のさつまいもも手に入ります
いかがでしょうか?
最後に、野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーで出会った他のさつまいもも写真で紹介します。
まずは「中国産さつまいも」。(写真左)アジア系スーパーで見つけました。見た目はかなりJapanese Sweet Potatoに似ていました。(でも、バンクーバーでは日本産の方が一般的)
次は韓国系スーパーに行くと「韓国産のさつまいも」が簡単に手に入ります。韓国系スーパーでは店頭に焼き芋の機械もあるところもあるので、手軽にホカホカの焼き芋を食べることができます。クオリティも悪くないものが多く、甘さも十分にありますが、少し高いイメージです。
また、バンクーバーにあるReal Canadian Superstore Supermarketというスーパーでは、「ジャマイカ産のさつまいも」をよく見かけます。少し見た目が悪い&少しお高いので、まだ買ったことがありません。
バンクーバーのアジア系スーパーで、茨城県行方のさつまいも(紅優甘)が販売されていましたよ。行方についてのポップも取り付けられていました。カナダの人が日本産のさつまいもに、より興味を持ってくれることを勝手ながら願っています…! pic.twitter.com/QBL1LQN0Am
— 野菜ソムリエHiro🇨🇦🌈 (@hiro_vegetable) April 29, 2022
そして!バンクーバーでは「日本産のさつまいも」も不定期で手に入ります!最近は秋や冬の時期に、たまにアジア系スーパーや八百屋で茨城県行方市のさつまいもをよく見かけるようになりました!(やはり北米のさつまいもより、日本産のものはクオリティが一段上だと感じます。自分は何もしていませんが、日本人であることが誇らしくなります。)
ということで、皆さんのお気入りのさつまいもがあれば、ぜひSNSでも教えてくださいね。この記事が、アメリカやカナダやその他の地域にお住まいの方で、どのさつまいもを購入すればよいか迷っていた方の助けに少しでもなれば嬉しいです。