ベトベトは完熟の証拠?ツルツルはワックス?りんごの油あがりとワックスまとめ5つ
2022/10/26
皆さん、りんごはお好きですか?
日本で特に人気のりんごといえば、フジ、サンふじ、王林などがありますが、ジョナゴールドやつがる、サンつがるなんかもとても人気がありますよね。
そして皆さんの中には、「なんかこのりんご、少しベトベトする?」というものも売り場で見かけたことがあるのではないでしょうか?
(ジョナゴールド)
昔の話ですが、野菜ソムリエHiroが地元岡山のスーパーで働いていたとき、
「このりんごの表面のベトベトって人工のワックス(被膜剤)なんでしょ?」
「触ったらベトベトするリンゴはなんか身体に悪そうだから買うのを避けている」
というお客様もいました。そこで今回は、りんごのベトベトとワックスについて5つに分けてまとめてみました。
日本だけでなく、欧米のりんごのワックス事情についてもお届けします。
この記事の目次
1.りんごのベトベトは自然のワックスで「油あがり(あぶらあがり)」という。食べ頃の合図でもある
結論から言うと、りんごのネトネト・ベトベトはワックスではなく、リンゴの表皮細胞から出る油成分です。
つまり、人口に塗布するワックスではなく、自然現象ということ!この現象を「油あがり」といいます。
りんごの表皮がベトベトになる流れは以下のような感じです。
1. リンゴの皮は元々ウルソール酸や関連化合物を含んでいるが、りんごが成熟するにつれて、オレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸の一種が分泌される
2. 成熟につれて増えた脂肪酸が、元々りんごの果皮表面にあった透明なろう物質を溶かす
3. ろう物質が溶けたため果皮がワックスを塗ったように光り、触るとべたべたするようになる
表面のべとべとはりんごが成熟した証ともとれるので、「購入後すぐに食べたい!」という方は、むしろ少しべたべたするりんごを購入するのもいいかもしれません。
時間が経つとさらにべたべたしてきますが、表面がべたついているのは既に熟しているので、できるなら早めに食べてください。
2. 天然のワックスはりんごの水分蒸発を防ぎ鮮度を守っている
りんごの収穫から日が経つにつれて、油あがりの現象が見られるわけですが、「理由は一体何?」と思う方もいるのではないでしょうか?
その答えは、りんごが水分の蒸発を抑えようとする = 自身の劣化を防ごうとしている役割 & 一部の微生物がリンゴの中へ入るのを防ぐバリア的役割があるんです。人間でいうところの、乾燥しないように肌に塗るボディークリームみたいなものでしょうか(^-^;
先ほどあげた油上がりの原因である不飽和脂肪酸の一種リノール酸やオレイン酸は、食べても特に問題ありません。
ちなみに英語でりんごの天然のワックスについて調べてみたのですが、Best Food Factsの「Is There Wax on Apples?」という記事には以下のように記されてみました。一部抜粋です。
The natural wax on the fruit of the apple contains about fifty individual components belonging to at least half a dozen chemical groups. The major cyclic component of apple fruit wax is called ursolic acid and is highly water-repellent. Research has shown that ursolic acid is capable of inhibiting various types of cancer cells
このリンゴ自身から生成される自然のワックスは少なくとも6種のケミカルグループ(?)に属する約50種類の違った成分によりつくられています。
ワックスの主要な環状成分は「ウルソール酸」と呼ばれ、非常に撥水(水をはじく)性があります。 研究によると、ウルソール酸はさまざまな種類の癌細胞を阻害することができる可能性があるとされています。
ということで、化学が苦手な野菜ソムリエHiroには「おぉ、50も違う成分からなるワックス?!ほ~、すごい~」ぐらいにしか理解できなかったのですが、人間が手を貸さなくても色んな成分からなるワックスで自分の身を守ることができるりんごって素晴らしいですね( ◠‿◠ )
3.油あがりが特によく見られる・べたべたになりやすいりんごは「つがる」「ジョナゴールド」「紅玉」
世界には7,000種類を超えるりんごがあるといわれていますが、それぞれべたべたになりやすい品種、べたべたになりにくい品種があります。ふじや王林、シナノゴールド、はるかなどの品種では油上がりの現象は見られません。
日本で油あがりを見かける品種でいうと、以下の品種が該当します。
日本国内でふじ(収穫量第1位)に続いて収穫量が多いといわれるつがるりんご。親品種はゴールデンデリシャス×紅玉です。
まだふじが出回らない頃に食べられる食味のよいりんごとして知られていて、お店にとっては9月10月前半頃のりんごの主力商品ともいえます。
甘味も十分ありながら、親である紅玉の酸味も受け継いでいます。早生種は貯蔵が効かないので、果肉が柔らかくなるのが早めです。べたべたしていたら、すぐに食べましょう。
★ジョナゴールド:甘味もありながら酸味が際立つ人気品種
アメリカ生まれのジョナゴールドもつがると同じく親品種はゴールデンデリシャス×紅玉です。コクのある酸味が楽しめ、生で食べてもOK、調理してもOKという便利なりんご。
日本では10月頃から出回ります。「このべとべとするりんごは何者!?」と思っている方は、おそらく大多数がジョナゴールド or つがるを指しているのではないかと思います。
個人的には、出始めの頃のジョナゴールドがすごく食感も味わいも良いと思っています。貯蔵ものが出回る頃になると、味がぼけたようなものも中にはあるので、ぜひ特に出始めにジョナゴールドを満喫してみてください。
★紅玉:お菓子作りに最適な調理向き品種
つがるとジョナゴールドの親品種でもある紅玉(こうぎょく)は、アメリカ生まれ。
甘味もあるのですが、強い酸味が味わえるりんごでお菓子作りなんかに大活躍します。果肉も煮崩れしません。
過去にはとても人気があったといわれる紅玉ですが、最近は売り場のすみっこで少し見かける程度ではないでしょうか?お菓子作りがもっと流行れば、もっと需要のあるりんごだと思っています。
10月~11月頃によく見かけるりんごです。
ちなみに海外ではどのような品種が油上がりになるのか「waxy」「greasy」みたいな単語で調べてみたのですが、探し出すことができませんでした(´;ω;`)ウゥゥ
個人的な経験からいうと、アンブロシア(Ambrosia)というカナダBC州原産のりんごは、たまにべたべたしているものが売り場に並んでいることもあります。
4.日本のリンゴ農家は人工ワックスを使わない
(日本で購入したサンふじりんご)
日本でのリンゴの栽培は天候の関係で農薬が必要不可欠ですが、人工のワックスかけは通常行われていません。(※世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した木村秋則さんの奇跡のリンゴの例もありますが、通常は農薬が必要)
大事なことなので、もう一度言います。
日本では人工ワックスを塗布したりんごは通常ありません。つまり、果物売り場でツルツルベトベトのりんごがあったとしたら、十中八九りんご自身による天然のワックスです。
また、農薬を心配されている方も多いかと思うのですが、農薬も農林水産省が規定する安全なものが使用されているので、皮を食べても身体に特に問題はありません。
皮に農薬が染み込むような農薬は常識的に考えても国が認めないでしょうし、農薬の散布量も厳しく決まっているので、しっかりと洗えば皮ごと食べても問題ありません。
むしろ皮に栄養がたくさん詰まっていて身体によいので、個人的にはりんごの果皮は絶対食べる派です。(もちろん料理によっては皮を使わないこともあるのですが、剥いた皮をつまみ食いしながら調理することもしばしば笑)
5. 欧米などの外国では食用の人工ワックスが使用されている場合も多い
欧米などの海外で暮らしている方は「そういえば海外のリンゴってツルツルの見た目のものが多いな~」と思う機会が多いと思うのですが、これは「日本と違って人工のワックスが塗布されているりんごが多い」ためです。
(カナダ東部トロントにあるスーパーで撮影した青果売り場。ツルツルした見た目のものが多いのが分かるかと思います)
例えば欧米では、りんごが収穫された後にまずしっかりと洗浄して汚れや農薬残留物を落とします。このプロセスで、残念ながらリンゴが元々持っている天然のワックスも落ちます。その後は洗ったリンゴを乾かして、人工のワックスを塗布する工程があります。
これは「見た目をツルツルで美味しそうに見せるため」、そして「自然のワックスと同じようにりんごの鮮度を保持するため」という理由があります。(実際オーガニックのりんごは人工ワックスを使わないので、見た目が劣っている)
(バンクーバーで発見したアメリカ産コズミッククリスプアップル。ツルツルの見た目はワックスによるもの)
「農薬がもし残留していたら、人工ワックスでコーティングされてしまうのでは?」と思う方もいるかと思いますが、基本的に洗浄時に残留した農薬は洗い落とされているはずなので、安心してください。
また、アメリカのりんごの洗浄からワックス塗布の工程の動画を以前YouTubeで見たことがある(※現在は削除された模様)のですが、「なんで欧米は自然のワックスを落としてまで、人工のワックスを塗布するの?文化の違い?」と思いました。
ここからは野菜ソムリエHiroの個人的な考えになるのですが、アメリカなど欧米で収穫されたりんごの多くは国外へ輸出されるので、輸送時間を一番に考慮して人工のワックスを塗布するのではないかと思っています。(世界のりんご輸出量でいうと、中国やEU、アメリカ、チリなどが多く、日本のりんごの国外輸出量に比べて段違いに多いです)
日本でも9,000km以上離れたニュージーランドのジャズアップルなどがたまに手に入りますが、その輸送時間に耐えられるようにするため、人工ワックスが必要なのではないかと思います。
実際、日本の売り場で見かける外国産りんごは、人工ワックスが塗布されたツルツルした見た目のものが多いのではないでしょうか?
(バンクーバーの八百屋にて。ワックスが塗布されたとは到底思えない見た目がそこまで良くない大玉りんごも多い)
ちなみに、カナダでは人工ワックスが全然かかっていないであろうりんごも売られているので、ご安心を。
さらに推測になるのですが、基本的には国外への輸出を目的としたりんごにはワックスをかけて、国内ですぐに消費されるものはワックスをかけていないものが多いのではないかと勝手に思っています(・_・;)
これは確証は全くないので、参考程度にしてもらえると嬉しいです汗
機会があればカナダのりんご農家さんにお話を聞いてみたいと思っています。
まとめ:りんごのべたべたは成熟の合図!べたべたし過ぎる前に食べましょう。べたべたが気になって食べられない方はしっかり洗ってください
ということでまとめると、今回覚えておきたいのは以下のことです。
★通常、日本のリンゴは人工ワックス不使用
★ベトベトしているのはリンゴ自身から出たろう物質だから安全
★天然のワックスはりんごが劣化するのを防いでくれる
★べたべたは熟している証といえる
★ジョナゴールドやつがる、紅玉は油上がりが見られやすい品種
★欧米などのリンゴは人工ワックスが塗布されているものも多い
★人工ワックスがかけられていたとしても、食用で身体に害のないレベルの量が使用されている
もし「どうしてもワックスが気になる・・・」という方は、りんごをまるまる沸騰したお湯に数秒つけて、その後水洗いをするとワックスがきれいに落ちます。
その他、レモン汁や重曹をつかって洗い落とす方法もあります。
ということで、今後買い物の際は、あえてベトベトしているりんごを選んでみてはいかがでしょうか?
ただ、なんにでも適量というものがあります。ベトベトの度が超えているりんごは過熟の可能性もあるので、お気を付けください。
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