野菜ソムリエ Hiro のベジフルポケット

食べ方は?幸運を呼ぶ柑橘?ブッシュカン(仏手柑)について知っておきたいこと7つ

      2024/05/22

皆さん、手のようなカタチをした果物「ブッシュカン(仏手柑)」をご存知でしょうか?

カナダでもなかなか手に入らない果物で、以前カナダ人の方から「あ、ブッシュカン、バンクーバーのどこかで見たことあるよ」と聞いていたのですが、それから約5年全く見かけず、ずっと探していたんですね~。

そんな中、2020年11月下旬にブッシュカンがWhole Foodsというスーパーに置いてあることをInstagramで教えてもらった野菜ソムリエHiro、早速Whole Foodsに行ってみると・・・

133601680_820824208764548_4844553132621037543_n

ブッシュカンーーーーーーーーー!!!!!

カリフォルニア産のブッシュカン(英語表記は Buddha’s Hand Lemonでした)が1ポンド(4.99カナダドル)でした。1kg買っても $ 11 (約900円程度)なので、日本で買うよりはもしかしたら安いかもしれません。

ということで今回は、まだまだ知名度が低いこのブッシュカンについて知っておきたいことを7つに分けてまとめてみたので紹介します。

1.数千年の歴史を持つ仏様の手に似た果物。ブッシュカンはアジア生まれの香酸柑橘類の一種

133656749_3553415164693643_8947158361243356786_n

まずはじめに、ブッシュカンはミカン科ミカン属の常緑低木樹。レモンに似ている果物「シトロン」の変種といわれていて、成熟したブッシュカンの香りもレモンに近いと個人的に思いました。SNSを見ると、その香りを金木犀やスミレに例えている方もいましたよ。

名前の由来は、果物の先がまるで指のように分かれる特殊なカタチが仏様の手のように見えることからです。手が開いたようになっているものから手が閉じたようなカタチもあったりと、それぞれカタチが異なるのもブッシュカンの面白いポイントです。

他の柑橘同様に未熟果のときは緑色で、熟すと黄色になります。

3866723_s

ブッシュカンはアジア原産で、古くから栽培されている果物です。栽培品種がインドで始まり仏教の僧侶を通じて中国に導入されたという説が最も信じられているので、インド原産という声も多いですが、100%明確ではないようです。

その後はアジア全体に広がり、貿易や兵士などによってヨーロッパに運ばれたといわれています。地中海でも栽培が始まり、紀元前301年にはローマでも栽培されていたと記録が残されています。

19世紀後半には日本からアメリカのカリフォルニアへ導入されましたが、当初商業的には栽培されず、個人が栽培を楽しむ程度でした。20世紀後半にはブッシュカンの小規模での商業栽培がカリフォルニアで始まり、今に至ります。

b22(手がめちゃくちゃ開いたものも購入しました)

また、色んな名前で呼ばれていますよ。

・日本 ⇒ ブッシュカン(仏手柑)
・中国(百度のリンクはこちら) ⇒ 佛手柑
・英語 ⇒ Fingered citron / Buddha’s hand

 

2.中は白い綿のみ!果汁がない柑橘

b6

ブッシュカンの外見から、「え、これってどこを食べるの?」と疑問に思う方も多いかと思いますが、一般的なブッシュカンは果汁がありません。

実際に半分に切ってみた写真がこちらです↓

b35

ご覧の通り中は白い綿部分だけで、みかんみたいな果汁が入っている房(サジョウ)が見当たりませんよね。なので、知らずにブッシュカンを買っていざ食べようと切ったときにガッカリしないでください(^-^;

b32

ちなみにUniversity of California Riversideによると、米国では1つの品種があるとされていますが、中国には果実の形、色、サイズ、樹木の成長習慣などが異なる12種類のブッシュカンの品種または亜品種が少なくともあると記されていました。

例として中国の雲南省では「Muli」または「Xiangyanggo」と呼ばれる品種があるそうですが、多くの品種が果汁がないタイプで、一部の品種には酸っぱい果汁が微妙に入るようですよ。

 

3.幸福と長寿の象徴?主に観賞用でお正月の縁起物としても人気

果汁が無いブッシュカンは食用にもできますが、主な用途は観賞用なんですね。

茶の湯の席の生け花などに用いられるので、茶道や生け花に詳しい方はブッシュカンについてご存知の方も多いかもしれません。

また、日本でブッシュカンはその末広がりなカタチから縁起物としてお正月の飾りにも利用されています。

みかんの代わりにお餅の上に置いたり、床の間に飾られたりしています。

同じく中国でもブッシュカンは幸福と長寿の象徴として人気があり、年末年始に友人などに贈ったりするようです。自宅のテーブルに飾ったり、仏教寺院に供物として捧げられていることもあります。

ちなみに英語版Wikipediaによると、伝統的にはお供えする場合は、「開いた手」よりも祈りの行為を象徴するような「閉じた手」のブッシュカンが好ましいようですが、定かではありません。

DonXuan-Market-3-1060x707

以前野菜ソムリエHiroがベトナムのハノイを訪れた際は、緑色のブッシュカンが大量に販売されていました。

また、レストランやホテルなどでブッシュカンがお供えされているのをよく見かけたのが印象に残っています。

temple-vietnam-13

 

4.日本での産地と時期は?

非常に霜に敏感なブッシュカンは、温暖な気候で最もよく育つ果物。通常晩秋から初冬に成熟するので、お正月頃に見かけるのも納得ですよね。

2010年の農林水産省による特産果樹生産動態等調査では、日本におけるブッシュカンの栽培面積は8haで、主な産地は鹿児島のみが記載されていましたが、農林水産省の2017年度版の産特産果樹生産動態等調査のエクセルシートを見てみると、仏手柑の名前が消えていました。(ガーン)

b7

現在では、和歌山県愛媛県、そして佐賀県唐津市にある富田農園(フランス生まれの黒いちじくビオレソリエスを栽培することでも有名!)でもブッシュカンが商業栽培されていますよ。

以下は2019年の夏に富田さんの農園を実際に訪問した際に撮らせてもらったブッシュカンです。このときは夏だったので真緑色のブッシュカンでしたが、そのカタチはごらんの通り既にブッシュカンそのものでした!

b4(棘がたくさんあるので、栽培も大変そうでした)

b5

b1

b3

ということで、その生産量の少なさからまだまだ珍しい果物といえます。ブッシュカンを手に入れることができた方はけっこうラッキーかもしれません。
 

5.海外での栽培はされているの?

b3
b2(今回実際購入したブッシュカンに付いていたラベルです)

ブッシュカンは日本でも珍しい果物ですが、海外でも希少価値が高い果物です。色々と調べてみると、日本、インドなどのアジア以外では地中海とカリフォルニアで栽培されているようです。

今回手に入れたものは先ほどもお伝えした通りカリフォルニア産。商品のラベルによると、カリフォルニア州フレズノ郡の都市リードリーに位置する1988年創業の柑橘専門の農園 RipetoYou で育てられたものであることが分かりました。

また、University of California Riversideの情報によると、中国では雲南省西部のWeishang郡の最大標高1,500 mの地域で長い間栽培されていたり、上海南部の浙江(せっこう)省の金華地区あたりでも栽培されているようです。

今は新型コロナウイルスのせいで無理ですが、中国や上海に旅行できる際には、あわせて調べてみようと思っています( ◠‿◠ )

 

6.ブッシュカンの選び方は?

b9

ブッシュカンの選び方は、他の柑橘同様に果皮が艶々していて香りがよいものを選びましょう。一部が柔らかくなっていたり、しなびているものは避けてください。

野菜ソムリエHiroがゲットしたものも果皮の先端あたりが少し茶色くなりかけていて、残念ながら鮮度がそこまで良いものではありませんでした(つд⊂)エーン

しっかり熟しているものは香りもたっぷり楽しめます。貯蔵は購入時の鮮度によりますが、室内で約1~2週間程度、冷蔵庫で2週間ほどは持つかと思います。(野菜ソムリエHiroは購入後、冷蔵庫に2週間入れて保管してました)

 

7.ブッシュカンの食べ方は?

ブッシュカンは基本的に果汁の無いレモンという感じで料理に使えます。なので、果汁を必要としない料理であれば、レモンの代わりとして利用することができます。

上の動画にもありますが、果皮を削ってサラダのドレッシングやパンケーキなどに使ったり、ウォッカなどでのお酒づくりやジャム、砂糖漬けにもできます。また、乾燥させて漢方にも用いられているというのも聞く話です。

上の動画はブッシュカンの砂糖漬けになります。元々ブッシュカンはかなり苦いので、しっかり茹でこぼさないと砂糖漬けにしても苦くて食べられないかもしれません。(実際にそのまま試食してみたら、食べられませんでした)

実際上のレシピに従って1回だけ沸騰した水に入れて茹でこぼしたのですが、完成品の苦さにたまげてあまり食べることができませんでした(´;ω;`)ウゥゥ

以下、みんながどのようにブッシュカンを調理しているのかインスタグラムで少し探してみました。アルコールに利用している方も多かったですよ~。

 

最後に:高知県特産のブシュカンは別ものなので注意

ちなみに皆さん、高知県の四万十地域で育てられている酢みかんの王様なんて呼ばれる「ぶしゅかん」をご存知でしょうか?

8月下旬~10月初旬頃まで実をつける柑橘は高知で知られていますが、同じ香酸柑橘類だったり名前がブッシュカンとよく似ているため、注意してくださいね。

見た目が違うのはもちろんですが、高知のぶしゅかんはひらがな表記となっていますよ。

b21

ということで、いかがでしたか?少しでもブッシュカンの魅力が伝わったのであれば幸いです。

野菜ソムリエHiroは手に入れたブッシュカンを砂糖漬けにしたのですが、今度は室内のデコレーションとして利用してみようと思っています~。

 - ぶしゅかん, ブッシュカン ,