カナダ10州の名産といえる果物をまとめてみた。ブルーベリーやクランベリーの産地は?
世界第2位の国土面積を誇るカナダは、10の州と3の準州から成ります。
- ブリティッシュコロンビア州 (British Columbia)
- オンタリオ州 (Ontario)
- ケベック州 (Quebec)
- ノバスコシア州 (Nova Scotia)
- ニューブランズウィック州 (New Brunswick)
- プリンスエドワードアイランド州 (Prince Edward Island)
- ニューファンドランド・ラブラドール州(Newfoundland and Labrador)
- マニトバ州 (Manitoba)
- サスカチュワン州 (Saskatchewan)
- アルバータ州 (Alberta)
カナダ3の準州の名前
- ノースウエスト準州(Northwest Territories)
- ヌナブト準州(Nunavut Territory)
- ユーコン準州(Yukon Territory)
以前、カナダで最も生産されている果物を調べて記事にしましたが、「カナダ全体ではなく、カナダ各州で最も生産されている、いわゆるその土地の名産と呼んでもいいような果物は何?」と疑問に思った野菜ソムリエHiro。
そこで今回は、カナダ統計局や各州政府などの情報を元にカナダ各州の名産といえる果物について紹介します。
※カナダの果物と野菜の大部分はオンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュコロンビア州で栽培されています。カナダ統計局によると、オンタリオ州、ケベック州、ブリティッシュコロンビア州が、果物栽培面積全体の約3分の2を占めています。2023年の場合、カナダで果物収穫量第1位はオンタリオ州(32.2%)、第2位がケベック州(28.6%)、第3位がブリティッシュコロンビア州(25.8%)となっています。
この記事の目次
- 1. ブリティッシュコロンビア州 (British Columbia)
- 2. オンタリオ州 (Ontario)
- 3. ケベック州 (Quebec)
- 4. ノバスコシア州 (Nova Scotia)
- 5. ニューブランズウィック州 (New Brunswick)
- 6. プリンスエドワードアイランド州 (Prince Edward Island)
- 7. ニューファンドランド・ラブラドール州(Newfoundland and Labrador)
- 8. マニトバ州 (Manitoba)
- 9. サスカチュワン州 (Saskatchewan)
- 10. アルバータ州 (Alberta)
- 最後に:カナダは州によって大きく果物の生産状況が異なる
1. ブリティッシュコロンビア州 (British Columbia)
太平洋に面したカナダ最西部に位置するブリティッシュコロンビア州。野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーがある地域です。冬は降雨量が多いものの、カナダでは比較的温暖な土地で、夏もカラッとしていて過ごしやすい場所です。
BC州政府によると、ブリティッシュコロンビア州の果樹(tree fruit)産業には、約400の商業栽培者がおり、約15,000 エーカーの土地でリンゴ、アプリコット、チェリー、ネクタリン、桃、梨、プラムなどを栽培しています。
オカナガンと呼ばれる地域は特に果物の栽培が盛んで、ブリティッシュコロンビア州の果樹の大部分 (80%) は、オカナガン北部、中部、南部で生産されています。また、オカナガンはワインの産地でもあります。
リンゴとチェリーはブリティッシュコロンビア州で主要な果樹であり、リンゴとチェリーだけで総栽培面積の 90% を占めています。
リンゴ (Apples)
特に中央オカナガン地域がリンゴの主要な産地で、多くの品種が栽培されています。ブリティッシュコロンビア州の2020年のレポートによると、リンゴの栽培面積の割合は州全体の52%で、最も栽培面積が大きいのは、セントラル・オカナガンです。
レポートによる栽培面積別の品種内訳は以下のようになります。カナダやアメリカにお住まいの方であれば、知っている品種も多いかと思います。
Variety | Acres | % of Total Acreage |
---|---|---|
Ambrosia(アンブロシア) | 2385 | 35.4% |
Gala(ガラ) | 2193 | 32.6% |
Honeycrisp(ハニークリスプ) | 529 | 7.9% |
McIntosh(マッキントッシュ) | 400 | 5.9% |
Spartan(スパルタン) | 358 | 5.3% |
Pink Lady(ピンクレディー) | 194 | 2.9% |
Red Delicious(レッドデリシャス) | 145 | 2.2% |
Granny Smith(グラニースミス) | 124 | 1.8% |
Fuji(フジ) | 98 | 1.5% |
Sunrise(サンライズ) | 79 | 1.2% |
Golden Delicious(ゴールデンデリシャス) | 49 | 0.7% |
Gingergold(ジンジャーゴールド) | 25 | 0.4% |
Salish(セイリッシュ) | 20 | 0.3% |
Jonagold(ジョナゴールド) | 14 | 0.2% |
Nicola(ニコラ) | 13 | 0.2% |
Ambrosia(アンブロシア)という品種はそもそもカナダ・ブリティッシュコロンビア州で生まれた品種で、甘味が強く酸味が少ない品種です。バンクーバーでは年中見かける大人気の品種で、アメリカなどにも流通しています。
アメリカからの輸入も多いリンゴですが、バンクーバーで夏後半~秋シーズンになると、地元のリンゴがたくさん手に入るようになるのも納得なのでした。
チェリー (Cherries)
カナダ政府のレポートによると、ブリティッシュコロンビア州はカナダ最大のスイートチェリー生産地で、カナダ全体で栽培されるスイートチェリーの約95%を生産しています。チェリーの栽培面積が最も大きいのは、北オカナガン(全体の30%)、中央オカナガン(26%)、南オカナガン(31%)です。海外からの需要の増加で、栽培面積を伸ばしている品目です。
北米で大人気のレーニア種を除いてチェリーが品種名で販売されるのは稀ですが、以下が栽培面積別の品種内訳です。(2020年のレポートより)
Variety | Acres | % of Cherry Acreage |
---|---|---|
Staccato | 1257 | 26.2% |
Lapins | 933 | 19.5% |
Sweetheart | 617 | 12.9% |
Sentennial | 499 | 10.4% |
Skeena | 347 | 7.2% |
Santina | 161 | 3.4% |
Cristalina | 150 | 3.1% |
Tieton | 90 | 1.9% |
Regina | 84 | 1.8% |
Rainier | 72 | 1.5% |
Satin | 66 | 1.4% |
Kordia | 64 | 1.3% |
Sovereign | 61 | 1.3% |
Van | 60 | 1.2% |
Chelan | 57 | 1.2% |
Benton | 42 | 0.9% |
Suite Note | 39 | 0.8% |
Kootenay | 36 | 0.8% |
Sandra Rose | 26 | 0.5% |
Sylvia | 25 | 0.5% |
BC Cherry Associationによると、カナダの農家が最もよく栽培しているチェリーの品種のほとんどは、ブリティッシュコロンビア州サマーランドにあるカナダ農業食品省のサマーランド研究開発センターで開発されました。
最も栽培されているスタッカート(Staccato)は晩生種で、スイートハート(Sweetheart)より後に熟します。日本でも知られるビング(Bing)種より1カ月収穫が遅くなります。大きい粒で甘く、光沢があり見た目も良好の品種です。
栽培面積が2番目のラピンズ(Lapins)は、サマーランド研究開発センターのカーリス・ラピンズ博士によって育成された品種。季節は 7月中旬から8月上旬に収穫となります。
また栽培面積3位のスイートハート(Sweetheart)も晩生の品種で、世界中で広く栽培されています。果実は丸みを帯びていて、しっかりとした食感で甘味も十分にあります。
クランベリー(Cranberries)
ブリティッシュコロンビア州はカナダのクランベリー生産量第2位の州で、過去10年間でみても第2位の収穫量をキープしています。2023年のデータだと、カナダのクランベリー生産量のほぼ 32% を占めています。(クランベリーはカナダ東部のケベック州で多く栽培されています)
州政府のページによると、ブリティッシュコロンビア州で最も一般的に栽培されている品種は Stevens、Bergman、Ben Lear、Pilgrimなどです。(※品種名とともにクランベリーが売られているところは個人的に見たことがないです。)
Ben Lear
1901年にウィスコンシン州の野生種から選抜。ブリティッシュコロンビア州では9月に収穫。貯蔵中に果実が腐りやすい。中程度の赤色の果実です。
Bergman
Early Black と Searles の交配種。ブリティッシュコロンビア州では 9月に新鮮な果実を収穫されています。果実は大~中程度で、濃い赤色。
Stevens
McFarlin と Potter の交配種です。ブリティッシュ コロンビア州で 9 月から 10 月中旬に収穫されます。果実の軟化に耐性があり、果実は非常に大きく濃い赤色です。
Pilgrim
Prolific と McFarlin の交配種。ブリティッシュコロンビア州では 10 月下旬から 11 月上旬に収穫。果実は長く楕円形で、非常に大きめ。
ハイブッシュブルーベリー(Highbush Blueberries)
ブリティッシュコロンビア州はカナダのハイブッシュブルーベリー生産の大部分を占めていることから、州の名産の果物と呼んでも良いのではないかと個人的に思います。
カナダ政府の情報によると、2021年にブリティッシュコロンビア州ではハイブッシュブルーベリーの栽培面積は27,008エーカーで、カナダ全体の88.6%を占めています。輸出も盛んです。
栽培種のハイブッシュブルーベリーと比べて野生種のローブッシュブルーベリーは日持ちしないので、野菜ソムリエHiroが暮らすカナダ西部ブリティッシュコロンビア州では残念ながら見かけたことがありません。(ハイブッシュとローブッシュの違いは以前記事にまとめました⇒)
Tree fruits
2. オンタリオ州 (Ontario)
カナダ東部にあるオンタリオ州は、北米有数の大都市トロントや、カナダの首都であるオタワがある州です。
主要な果物の栽培地域は以下の網掛のエリアです。
photo: ontario.ca
オンタリオ州ではリンゴや桃に加えて、ブドウ、ナシ、ネクタリン、アプリコット、プラム、プルーン、サクランボ、ラズベリー、イチゴ、ブルーベリーなどが栽培されています。
オンタリオ州の商業用果物生産者は、25,294ヘクタールの土地で年間450,900トン以上の果物を栽培しています。農場の総出荷額は2億2,500万ドルを超えます。
特に肥沃な土壌と長い果樹栽培の歴史を持つナイアガラ地域は、果物栽培に適した土地として有名です。ブドウと桃の生産が盛んで、ナイアガラ地域のワインはよく知られています。
リンゴ (Apples)
オンタリオ州には約 700軒のリンゴ栽培者がいて、ナイアガラ地域は特にリンゴの主要な産地。オンタリオ州政府によると、主なリンゴ生産地域は、オンタリオ湖、エリー湖、ヒューロン湖、ジョージアン湾の岸に沿って広がっています。
Red Deliciousや Northern Spy、Mclntoshなどの人気品種が育てられています。以下、栽培されている品種とおおよその生産率です。
Variety | % of Total Acreage |
---|---|
Cortland | 0.5% |
Gala | 1% |
Jonagold | 1% |
Golden Delicious | 1% |
Spartan | 1.8% |
Mutsu | 2% |
Idared | 7% |
Northern Spy | 10% |
Red Delicious | 12% |
Empire | 19% |
McIntosh | 27% |
Others – early and late varieties | 17.7% |
オンタリオ州のリンゴの約半分は生食用で、残り半分は加工用として使用されています。加工用のリンゴの90%はジュースづくりに回ります。マッキントッシュ(McIntosh)はジュース、ノーザンスパイ(Northern Spy)はパイの詰め物に最もよく使用されます。(どちらも酸味の効いた味わいのリンゴです)
ブドウ (Grapes)
カナダではオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州だけが、生食用とワイン用ブドウの大規模な商業生産が可能となっています。
オンタリオ州はブドウとワイン産業において、カナダの生産量で最大の割合を占めています。(ナイアガラ半島、オンタリオ州南西部、プリンスエドワード郡の 7,000 ヘクタールのブドウ園で、カナダ国内のワインの 85% 以上を生産)
ナイアガラ地域はワイン用ブドウの一大産地で、主な生産地域はナイアガラオンザレイクからオンタリオ湖の南岸の狭い帯に沿って東西に約45km にわたって広がっています。オンタリオ州全体で見ても、ナイアガラ半島はオンタリオ州のブドウの 94%以上の生産割合を占めています。
栽培品種としては、オンタリオ州の生産量の約 55%は Vitis vinifera 種で占められており、その傾向は年々増加。French hybrids は 25%、labrusca種は 20% を占めています。
また、ブドウ以外でも、桃、ネクタリン、アプリコットの90%、プラムの 80%、スイートチェリーの 75%、ナシの 72%、サワーチェリーの 60%を生産していることから見ても、ナイアガラ地域がオンタリオ州の中でもいかに果物の栽培に適した産地であることが分かります。
近年はより高品質のワインの需要に応えるため、より価値の高いブドウの栽培が大幅に増加していて、ナイアガラ地域では、リンゴなど他の果物の栽培面積がブドウに置き換えられているそうです。
3. ケベック州 (Quebec)
面積は約154万平方キロメートルでカナダ全体の面積の約15.4%を占め、カナダ最大の州のケベック州。フランス語が公用語であり、文化的にも独自の特徴を持っています。
果物では、ローブッシュブルーベリーやクランベリーが主要で、リンゴ、イチゴ、ラズベリーなども栽培しています。
クランベリー (Cranberries)
クランベリーはブリティッシュコロンビア州やオンタリオ州でも栽培されていますが、ケベック州が国内最大のクランベリー生産地として知られています。2023年は生産量が2022年より大きく減少しましたが、それでもカナダのクランベリー生産量の61%となりました。
世界的にみてもクランベリーの主要な生産地の一つであり、主にケベック州中部が同州のクランベリー生産の80%以上を占めています。特に北アメリカ市場への供給が多く、州の経済にも大きく貢献しています。
ローブッシュブルーベリー(ワイルドブルーベリー)
ローブッシュブルーベリー(ワイルドブルーベリー)生産量でカナダトップの州です。州には、55,000 エーカー以上のローブッシュのブルーベリー畑があり、そのほとんどがケベック州北部にあります。
特にSaguenay–Lac-Saint-Jean地域で主に生産されていて、近年はブルーベリー畑の成熟と栽培方法の改善で収穫量がさらに増加傾向にあります。2023年の調査では、ケベック州が国内総生産量の42%を占めています。
また、Quebec Wild Blueberries(ケベック州ワイルドブルーベリー協会) は、ローブッシュブルーベリー(おそらくドライフルーツなどの加工品)を日本に輸出しています。
ちなみにカナダは米国に次ぐ世界第2位の商業用ブルーベリー生産国。そして、世界最大のローブッシュブルーベリーの生産国といわれ、ローブッシュブルーベリーの商業生産はケベック州(2023年の国内生産量の42.3%)、ニューブランズウィック州(25.4%)、ノバスコシア州(21.3%)、プリンスエドワード島(10.8%)に限定されています。
リンゴ (Apples)
ケベック州の南部はリンゴの生産が盛んで、特にシードル(りんご酒)の製造が盛んです。品種としてはマッキントッシュ種(2023年の調査ではリンゴ全体の生産量の35%)が多く栽培されていて、ガラやアンブロシア、ハニークリスプの生産が増えてきています。
4. ノバスコシア州 (Nova Scotia)
カナダ東部の大西洋に面する州、ノバスコシア。ノバスコシアという名前は、「新しいスコットランド」を意味するラテン語に由来しています。世界遺産のルーネンバーグ旧市街があったり、美しい風景が見られるペギーズコーブ、ノバスコシア州の州都ハリファックスなどで知られています。
ノバスコシア州の農業はローブッシュブルーベリーとリンゴの栽培で有名です。ローブッシュブルーベリーは州の果物総面積の80.3%を占め、次いでリンゴが11.0%、ブドウが2.6%となっています。
ローブッシュブルーベリー (Lowbush Blueberries)
ローブッシュブルーベリーは北米東部の固有種で、ノバスコシア州の酸性土壌によく適応しています。ブルーベリーはノバスコシア州にとって特に重要な作物として知られ、ノバスコシア州最大の果物作物となっています。
カナダ統計局によると、ノバスコシア州はカナダで3番目に大きなローブッシュブルーベリー栽培面積を持っているというデータが2021年に出ていて、カナダで報告されているローブッシュブルーベリー作付面積の5分の1以上 (22.0%) を占めているとのことです。
リンゴ (Apples)
ノバスコシア州のリンゴの栽培面積は4,924 エーカーで、カナダ国内で4番目に大きい規模と報告されています。特に西部に位置するアナポリスバレー(Annapolis Valley)はリンゴの生産の中心地で、多くの品種が育てられています。
Nova Scotia Appleのページによると、ノバスコシア州の他の地域よりも 55日多く晴天が続き、夏の気温は最高30度、バレーの 1日の平均気温は 23 度で、夜は涼しく16度という気候条件とのことです。
5. ニューブランズウィック州 (New Brunswick)
ノバスコシア州とケベック州の間にあるニューブランズウィック州。カナダ国内で有数のジャガイモ生産地であり、酪農も重要な産業で、バターやチーズも多く生産されています。ジャガイモ、オート麦、大麦が3大畑作物です。
果物でいうと、ローブッシュブルーベリー(43,369 エーカー)に続いてクランベリー(875 エーカー)とリンゴ(553 エーカー)の栽培が盛んです。
クランベリー産業でいうと、1990年代初頭の25エーカーから現在では800エーカーをはるかに超える規模に成長し、成長を続けています。リンゴは、州内で100年以上商業生産の歴史があり、主要地域は州の南東部と中部の2ヵ所です。
ローブッシュブルーベリー (Blueberries)
カナダ東部ということで、ニューブランズウィック州でローブッシュブルーベリーの栽培が盛んです。ニューブランズウィック州はカナダの総生産量の 25% ほどを生産しています。
少し前のデータになりますが、2011年~2016年にかけて、州の果物、ベリー類、ナッツの栽培面積は52.4%増加したということですが、その増加は主にブルーベリーによるもので、その栽培面積全体の 95.4%を占めていたということです。
ニューブランズウィック州政府のウェブサイトによると、2012年の収穫量は過去最大で約 2,000万kg に達し、5年間の平均収穫量は 1,470万kg/年とのことです。
また、こちらも古い情報になってしまいますが、2010年の政府の資料によると、州には約 11,300ヘクタールのローブッシュブルーベリー畑があり、300以上の農家が生産に携わっています。農場の95%以上は沿岸地域にあるということですが、これは沿岸地域の場合、霜のリスクが軽減されるためということです。
Blueberries: A bright spot for New Brunswick agriculture
ニューブランズウィック州政府
Agriculture, Aquaculture and Fisheries
Industry Overview: New Brunswick Wild Blueberries
6. プリンスエドワードアイランド州 (Prince Edward Island)
赤毛のアンの舞台として日本人にも知られているカナダ東部にあるプリンスエドワード島は、カナダで最も小さな州です。2020年7月時点で州の人口は159,625人でした。漁業だとロブスター漁が盛んですが、農業だとカナダ最大のジャガイモ生産州として知られています。
野菜ソムリエHiroも実際に旅行で訪れたことがあるのですが、プリンスエドワード島の西部にはポテトミュージアム「Canadian Potato Museum」があり、ジャガイモ農家さんを訪れることができるツアーも提供しています。(個人的にめちゃくちゃオススメです)
果物では、ローブッシュのブルーベリーを筆頭に、クランベリー、イチゴ、ブドウ、リンゴなど、さまざまな種類の果物を生産しています。 2020年、ブルーベリー栽培の総面積は12,500エーカーであることが政府のウェブサイトに記されています。
ローブッシュブルーベリー (Lowbush Blueberries)
Farm&Food Care Prince Edward Islandによると、プリンスエドワード島は平坦な畑と岩が少ないため、ローブッシュブルーベリーの栽培に理想的な場所です。約125の島の生産者が約13,000エーカーのローブッシュブルーベリーを栽培し、2020年には約1,860万ポンド(8,436,818kg)を収穫したとのことです。
野菜ソムリエHiroも以前プリンスエドワード島を訪れた経験があるのですが、現地にはワイルドブルーベリー狩りができるファームも数軒ありました。(ローブッシュのブルーベリー狩りも行われていましたが、季節のタイミングが合わず行くことができませんでした。次回はワイルドブルーベリー狩りを体験してみたいと思っています。)
7. ニューファンドランド・ラブラドール州(Newfoundland and Labrador)
ニューファンドランドラブラドール州は、ケベック州からさらに東にあるカナダ最東端の地域です。気候的に、梨やリンゴ、プラムなどの果樹を栽培するのが難しい地域で、2023年の果物の生産量データを見てもカナダの州の中でシェアは 0.1%と、果物の栽培にはあまり向いていない地域といえるかもしれません。
ただ、州政府の果物に関する産業情報によると、ベリー系など小さな果実のものは栽培されていて、イチゴ、ローブッシュブルーベリー、ラズベリー、カラントなどが主に栽培されています。最近ではブドウも少量ではありますが、栽培されています。
また、ニューファンドランド・ラブラドール州でのクランベリー栽培は1990年代後半に始まったばかりです。同州のクランベリー産業をさらに発展させるためのクランベリー産業開発プログラムも2014年に邦政府と州政府から発表され、生産量を増やしています。
ローブッシュブルーベリー (Lowbush Blueberries)
ニューファンドランド州は、北米の生産量の 1~2%ほどを占める最小の生産者ですが、伝統的にローブッシュブルーベリーは州の果物生産の主な商品として知られています。
州政府のウェブサイトによると、果物生産に対する農場の現金収入はイチゴが最大ですが、生産量ではクランベリー、生産面積ではブルーベリーが最大とのことで、ワイルドブルーベリーの生産量は年間30万ポンドを超えるとのことです。
生で食べるのはもちろん、焼き菓子、ワイン、ソース、ジャムづくりなどに使用されます。
8. マニトバ州 (Manitoba)
カナダ中部に位置するマニトバ州。カナダの主要な小麦生産地の一つであり、特に高品質の小麦が生産されています。カナダ最大のキャノーラ(菜種)生産地の一つで、キャノーラ油の生産に欠かせない場所です。また、畜産業も盛んです。
果樹園の数でいうと、2021年のデータでは州内66ヵ所にとどまります。2023年の調査では、果物が栽培されているのは186エーカー、果物の生産量でいうと10州の中で最下位(国内シェア0.0%)と、他の州に比べると果物の栽培はあまり盛んではないといえます。
サスカトゥーンベリー、カラント、グーズベリー、クランベリーなど、サイズの小さなbush fruitが栽培されています。
9. サスカチュワン州 (Saskatchewan)
カナダの中西部に位置するサスカチュワン州。アルバータ州とマニトバ州の間にあります。寒すぎて農業ができないイメージがある方もいるかと思いますが、州の経済は主に農業によって支えられています。
果物でいうと、国内生産量のシェア0.1%と目立ってはいませんが、サスカチュワン州政府によると、現地で栽培される果物の種類には、サスカトゥーンベリーのような野生の在来種から選ばれた栽培品種と、厳しい気候に耐えられるように品種改良されたリンゴのような果物があります。
また、サスカチュワン州では新しい商業用フルーツとして耐寒性が非常に強いハスカップの名前も挙がっています。ハスカップの生産はサスカチュワン州の果物産業で最も急速に成長している分野の1つとのことです。もう一方で、カナダのサワーチェリー果樹園の17%がサスカチュワン州にあります。
サスカトゥーンベリー (Saskatoon Berries)
個人的にサスカチュワン州で名産と呼んでよいかと思うのが、耐寒性植物のサスカトゥーンベリーです。この植物はアラスカからカナダ西部および米国西部と北中部に分布しています。カナダの先住民によって生または乾燥させて長い間食べられてきました。
州内には 1,100エーカーのサスカトゥーンベリーが栽培されていると推定されていて、同州はカナダのサスカトゥーンベリー果樹園の28%、商業用栽培面積の34%以上を占めています。
ジャム、ゼリー、ソース、冷凍フルーツ、ドライフルーツ、お茶などのサスカトゥーンベリー製品の開発をしています。ちなみに、サスカチュワン州サスカトゥーン市(同州最大の都市)は、このベリーにちなんで名付けられました。
10. アルバータ州 (Alberta)
ブリティッシュコロンビア州の隣にあるカナダ西部のアルバータ州。石油鉱業や畜産業、農業などが主な産業ですが、冬は気温が-30°Cを下回ることもあり、厳しい寒さになるため、その気候に耐えられるような耐寒性の高い果樹が栽培されています。
2023年の国内の果樹園の数から見ると州のシェアは1.7%。果物の生産量の国内シェアは、サスカチュワン州やニューファンドランド・ラブラドール州と同じく 0.1%にとどまっていました。
先ほど紹介したサスカトゥーンベリーは寒冷地に適した果物ということで、アルバータ州でも栽培されています。また、ラズベリーやいちごなども栽培されています。
アルバータ州では、気候条件に適した果物の品種や栽培方法を工夫することで、限られた条件の中でも果物生産を行っています。地元産の果物は、短い夏の間に収穫され、新鮮な状態で市場に出回ります。
最後に:カナダは州によって大きく果物の生産状況が異なる
この記事を通して、広大なカナダは各州によって果物の生産状況が大きく異なるのが、なんとなくでも伝わったのではないかと思います。今回各州について調べていて、「この州はこんなに果物が栽培されているんだ!」という発見もあれば、「この州は思った以上に果物の栽培が難しいんだな」という場所もありました。
野菜ソムリエHiroが暮らす西部のブリティッシュコロンビア州では毎シーズン色んな果物が楽しめます。初夏になれば地元のイチゴが出回り始め、ラズベリーやブルーベリー、ブラックベリーもたくさん出回ります。夏も終わり頃になると、地元のリンゴが続々と出始めて、他の季節では購入できないリンゴの品種も多く見かけるようになります。
冬と春は他の国の果物で収穫されたスーパーの果物売り場を多く埋め尽くしますが、アメリカやメキシコだけでなく、アジア各国の果物も多いので、とても国際的な売り場だとも言えます。
近い将来で各州の果物の生産状況が大きく変わることは無いかと思いますが、今後よりカナダ各地域の気候に適した品種などが開発されたら、今は生産量の少ない地域でも栽培者ならびに生産量ももっと増えるのではないでしょうか?
個人的には、カナダの各州が名産と呼べる果物を今よりもっと確立してくれたらいいなと思います。カナダ全体で生産量の多い果物については以下の記事をチェックしてみてください。