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ブラジル産シャインマスカット?ピラールマスカット(Pilarmoscato)について調べてみた

      2024/04/29

昨今、日本ではシャインマスカットの国外流出がよくニュースになっています。(以前シャインマスカットの海外流出問題についてまとめた記事はこちら

シャインマスカットは日本で30年以上かけて開発された品種で、種も無く皮ごと食べられるマスカットとして、今では最も人気のぶどうの一つとなりましたが、その裏で苗が韓国や中国に流出したことで、日本は100億円超の経済損失が出ているとも聞きます。

IMG_3070(バンクーバーのアジア系スーパーマーケットT&Tにて)

野菜ソムリエHiroが暮らすカナダBC州バンクーバーでも、2018年頃から秋や冬頃にアジア系スーパーに行くと、韓国産のシャインマスカットがお店に並ぶようになりました。値は少し張りますが、見栄えも良いものが多い印象です。

しかし、実は韓国産のシャインマスカット以外にもバンクーバーでよく見かけるシャインマスカットがあります。それがこちら↓

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そう、“ブラジル産シャインマスカット”と称して販売される「Pilarmoscato(ピラールマスカット)」です。

「ブラジルにシャインマスカットの苗が流出したのは聞いたことがないけど、本当にシャインマスカットなの?」「シャインマスカットのブランドがPilarmoscato?」「パッケージのAPPCって一体何なの?柿の絵?」など疑問に思ったので、今回はこのブラジル産Pilarmoscato(ピラールマスカット)について調べた内容をまとめて紹介します。

 

はじめに:ブラジルのAPPC農協(サンパウロ州柿生産者組合)について

まずはじめに、ブラジル産シャインマスカットと称して販売される商品のパッケージにある APPC について紹介します。

Pilarmoscato-2

APPCはブラジルのサンパウロ州南西地域のピラールドスル(Pilar do Sul)にある2012年に設立された組合のことで、高品質の果物を生産することを目標にしています。正式には Associação Paulista Produtores de Caqui といい、日本語では APPC 農協/サンパウロ州柿生産者組合(以下、APPC農協と表記)と言われています。

元々は柿の販売に難しさを感じていた農家の集まりで、団結することで共同販売を目指していました。組合の当初の目標の一つは、日本へブラジル産の柿を販売することだったといいます。

 

そんな中、過去にJICA(ジャイカ / 国際協力機構)からシニアボランティアで浦田昌寛さんという技師の方がブラジルを訪れ、約14~15年間滞在。柿以外に何を栽培すればいいのか、研究を続けていたそうです。

さらに農業技師として指導をしていた増永セルジオさんも一緒となり、APPC農協でピラールマスカットを栽培することが決定。ピラールマスカットは輸出にも良いぶどうで、国内の生産もまとまり品質も揃うようになって、今では組合の主力アイテムとなっています。

そんなわけで、APPC農協は農林水産省の日系農業者・団体データベース一覧にも掲載されていて、日本の農林水産省の農業研修を通じて技術を習得した組合員が中心となっています。

download (1)Photo: 農林水産省 中南米日系農業者等との連携交流・ビジネス創出委託事業

「なんで農林水産省がブラジルの人たちを助けているの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、ブラジルをはじめとして、中南米は世界の食料市場における一大供給地域!

日本にとっても食料安全保障上、とても必要な国々であることを理由に「良好な関係を維持・強化する必要がある」ということで、農林水産省では現地の農家と相互の連携強化・交流や、ビジネス創出などを目指して活動を行っているんです。

中南米の方が日本を訪れて、農場訪問や・収穫体験などの研修が行われることもあります。

余談ですが、ブラジルは世界一日系人が多い国として知られていて、平成27年10月時点でブラジルには日系人が約190万人が在住していることからも、日本とつながりの強い国といえそうです。

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また、APPC農協はPilarmoscato(ピラールマスカット)を栽培している他にも、デコポン(Kinsei)、アテモヤ、スモモ、柿も栽培しています。

この日本との関わりから、日本生まれのぶどうの品種「藤みのり」と「紅伊豆」もAPPC農協が栽培しているようで、実際、APPC農協が栽培した藤みのりは、野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーでもたまに販売されていることがあり、何度か購入したこともあります↓

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F5(日本で見かけていた藤みのりより粒のサイズは小さめで、甘さも控えめな印象を受けました)

APPCを知らなかったときは、「え、藤みのりや紅伊豆も知らない間に海外に流出したのかな・・・?」と個人的に思っていたのですが、農林水産省が絡んでいるのであれば安心ではないでしょうか?
 

シャインマスカットなのかどうか知りたくて、Pilarmoscato(ピラールマスカット)について調べた結果⇒シャインマスカットではない

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ここからは「ピラールマスカット」について紹介します。

APPC農協が独占的に栽培・販売しているピラールマスカット。「ブラジル初のグルメぶどう」と呼ばれています。(栽培が非常に難しいとのことです)

APPC農協の公式サイトによると、ピラールマスカットという名称は、ブドウの品種「APPC007 Estela」に対して使われる登録商標。(※Estela が何を指すのかは不明)つまり、ブランド名なんですね。

APPCの定めた基準を満たしたものだけが、Pilarmoscato(ピラールマスカット)を名乗れるというわけです。

 

また、ニッケイ新聞のこちらの記事によると、ピラールマスカットは13品種のなかから味が良く甘いぶどうを選別して品種改良を重ねて誕生したブドウとのことで、2011年から商業的な栽培がスタート。

今ではカナダ、ヨーロッパ、香港、シンガポールやアラブ首長国連邦などにも輸出されています。

※「その13品種の中にシャインマスカット的なものがあって、そこから品種改良して育てたのかな?」との考えもよぎったので、InstagramからAPPC農協に直接メッセージを送ってみたのですが、英語だったためか返事は返ってきませんでした。

もう一方で、TUJU研究創造センター(Centro de Pesquisa e Criatividade TUJU)の上記の投稿を訳してみると、ピラールマスカットは「イタリアブドウの自然突然変異から生まれたブドウで、10年間の研究の末、2011年からAPPC農協の組合員によって生産され始めた」とも記されていました。

シャインマスカットは農林水産省が所管する農業・食品産業技術総合研究機構によって育種・登録された広島県生まれのブドウなので、シャインマスカットとピラールマスカットは異なることが分かりますよね。

ちなみに、現地では収獲祈願祭も行われるようで、生産者や流通販売業者などが招待されています。2023年1月21日には、在サンパウロ日本国総領事館の桑名良輔総領事(写真上)が参加していました。

上記の投稿を翻訳してみると、「特別な注意と献身により、ジューシーで高品質のブドウが生産されます。今年は好天に恵まれ、宝石のようにみずみずしく成長!ブラジルおよび国際市場ですでに出回っているピラールマスカットをぜひお試しください」といった内容でした。

もしこのピラールマスカットがシャインマスカットだった場合、さすがに現地の総領事館も宣伝しないかと思うので、この件からも、ピラールマスカットがシャインマスカットではないことをより信じさせてくれる結果となりました。

 

本当にシャインマスカットに味が似ているの?ピラールマスカットを実際に食べてみた感想

ピラールマスカットが他の一般的なぶどうと一線を画す存在になっている理由は、その光沢のある大きな粒と見た目の良さ、果皮の苦みの無さ、種の無い食べやすさ、そして糖度の高さが挙げられます。

多くのウェブサイトに「従来のぶどうは糖度14度前後なのに対し、ピラールマスカットは少なくても糖度が18度以上」と記されていました。そのため、他のぶどうよりも一般的に高値で取引されているようです。

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野菜ソムリエHiroが暮らすバンクーバーでもアジア系スーパーに行くとよく販売されていて、大体12ドル~17ドル(※個人的な感覚です)くらいのように思います。(ピラールマスカットとしてではなく、「ブラジル産シャインマスカット」という値札が毎回付いています。)

下の写真は以前購入したものです。1パック500g、セール価格で12.99カナダドル(1カナダドル100円だとすると、1,299円ですね)でした。セール価格でも、他の一般的なブドウに比べると、やはり値段は少し高く感じますね。

Pilarmoscato-6(写真を撮ったらかなり明るい色合いになりました)

ピラールマスカットの収穫は現地で12月~5月頃にかけて行われるということなので、基本的にその時期にバンクーバーでも手に入るようになります。

糖度が18度以上が基本で、最大22度にも達するグルメブドウとして知られるピラールマスカットを食べてみた感想をお届けします。

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まずは見た目から。正直なところ、見た目の整い具合は韓国産シャインマスカットの方が良いのですが、ブラジル産のピラールマスカットも粒が大きくて光沢があり、とっても美味しそうに見えませんか?

糖度が18度くらいはあるということで食べるときは毎回期待しているのですが、写真のものの糖度を計ると15度でした。ブラジルからカナダへの輸送などの過程で時間が経って、本来の甘さではないのかもしれないと思いました。

また、食感はシャインマスカットにかなり似ているかと思います。果皮はパリッとしていて、苦味も特に感じませんでした。

果汁は多いのですが、少し水っぽい甘さという感じで、日本のシャインマスカットの濃い甘さに比べると、甘さ控えめな印象を受けました。(※シャインマスカットではないので、味が違うので比較するのもどうかと思うのですが・・・!)

Pilarmoscato-23(もちろん種無し)

ピラールマスカットは過去に何度も食べたことがあるのですが、毎回同じ感想になります。ちょっと甘さ控えめのシャインマスカット的な印象です。

糖度が高いものは、シャインマスカットの食味にかなり近いものになるかと思うので、いつかブラジルの現地でも食べてみたいな~と思います!

ブラジル現地でピラールマスカットの農園を訪れることができるツアーも発見したので、一応シェアします。(今もツアーを行っているのかは不明です。お問い合わせしてみてください。)

結論:Pilarmoscato(ピラールマスカット)はシャインマスカットでは無い

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ということで結論ですが、ピラールマスカットはシャインマスカットではありませんでした。

推測の範囲になってしまうのですが、皮も食べられる緑系ブドウ&糖度も高く食味もけっこう似ていることから、バンクーバーでは「ブラジル産シャインマスカット」という名前で販売されているのかもしれません。

ん~、紛らわしいことこの上無い・・・。

カナダやピラールマスカットが販売されている国にお住まいの方で、まだピラールマスカットを食べたことが無いという方は、ぜひ一度トライしてみてください。

APPC農協
【Pilarmoscatoの紹介ページ】(英語)

 

 - シャインマスカット, ピラールマスカット