皆さん、尾田栄一郎先生の大人気少年漫画「ONE PIECE(ワンピース)」は知っていますよね。
野菜ソムリエHiroも例にもれず ONE PIECE のファンなのですが、作中に登場する悪魔の実を食べてみたいと思ったことはありませんか?
本日はそんな皆さんにはたまらない(?)果物「Kadsura coccinea(黑老虎 / 布福娜)」を紹介します。
個人的にこの世の果物の中で悪魔の実に見た目が一番近いと感じているのですが、皆さんは以下の写真を見てどう感じるでしょうか?
この記事の目次
1. どこで、どんな環境で栽培されているのか?
マツブサ科サネカズラ属の黒老虎(別名:布福娜 / 学名:Kadsura coccinea)。学名は日本だとおそらく「サネカズラ・コッキネア」と読みますが、その他に日本での呼び名があるのかは不明です。
そのため、この記事では中国での呼び名「黒老虎(布福娜)」と以下表記します。
常緑つる性の低木で、まるで悪魔の実のような球体の果実をつける黒老虎(布福娜)の産地は、主に中国とベトナムの山岳地帯です。
中国版Wikipedia的なウェブサイトBaiduによると、中国では江西省、湖南省、広東省、香港、海南省、広西省、四川省、貴州省、雲南省 (平辺、河口、金平、孟子、文山、司馬、京東) に分布します。
中国中部および南部の冷涼多湿環境での生育に適していて、山岳地帯(通常、標高1500~2000メートルあたり)に広く分布。20〜25℃の暖かく湿気の多い条件下でよく育ちます。逆に冬に気温が低いところで育てる場合は温室が必要かもしれません。
中国では開花期は4月~7月頃、結実期は7月~11月頃となっています。
野菜ソムリエHiroがそもそもこの果物を知ったのは、ハワイで珍しい果物を育てている Joe Hewitt さんが2022年6月2日に投稿していた写真・動画を見たのがきっかけでした。つまり、ハワイでも育てられるということですね。
さらにこの黒老虎(布福娜)について英語でまとめているkadsura.comを見ると、、ミャンマー北部やタイ、ラオス北部(一応ですが、ラオスは東南アジアの国です)の地域でも栽培されているそうです。
もう一方で、ボルネオ、ジャワ、フィリピンにも熱帯種があるようですが、一般的に味は寒さに強いタイプの黒老虎(布福娜)の方が良いそうです。
kadsura.comには「中国と東南アジアの地域の農民と部族は、経済の変化が広範囲の森林伐採をもたらすまで、何世紀にもわたってこの果実を栽培してきました」と記されていました。
また、黒老虎(布福娜)が過去800年以上の間収獲されていたのは間違いないとのことです。ただ、最近まで自生していたものから収獲されていたような果物だったのに、農村開発などが進み、環境破壊が進んだことで、本来自生していたような場所で、野生の黒老虎(布福娜)を見つけるのは困難になってきているそうです。
この黒老虎(布福娜)を求めて旅をした経験と、アメリカ・カリフォルニア州Chicoで黒老虎(布福娜)を実験的に栽培したこともある Blackさん(上の動画の男性)は、「アクセスするのが非常に困難な中国の遠隔地の山岳地帯の先住民市場で取引されていた果物であり、一部の地域は今でもそうです。」と語っています。
上の動画は英語ですが、貴州省の山岳地帯での黒老虎(布福娜)の栽培の様子が撮影されているので、ぜひ確認してみてください。他地域での販売や品種改良を目的として栽培を始めたのはここ10年とのことですが、この地域ではなんと4~500年前から野生のものを収穫していたそうです。(気候はサンフランシスコやオレゴン州の海岸地域に似ているとのこと)
もう一方で、貧しい農村に暮らす人たちがお金を作るために、富をもたらす果物として商業的に黒老虎(布福娜)が栽培されたりもしているとのニュースもBaiduにありました。
2. サネカズラ・コッキネア(Kadsura coccinea)は「美と長寿の果物?」名前がたくさんあるので覚えられない件
中国での「黒老虎」という名前は、大きな黒い実が遠くから見ると虎のように見えるために名付けられました。
果実が熟すと、ツルにぶら下がる黒い虎たちが遠くから見るとぶどう棚のようにも見えると、以下のニュース動画で報道されています。黒老虎(布福娜)がたくさん実っているところが撮影されているので、確認してみてください。
また、こちらの記事「天柱县白坌村:满山尽是“布福娜”,绿了青山富了民」を読む(翻訳する)と、「布福娜」という名前は現地で暮らすミャオ族の言葉で「美と長寿の果物」という意味があることが分かりました。
その他にも以下の名前がBaiduに記されていました。それぞれどんな理由から付けられたのかが気になりますね。
- 冷饭团
- 过山风
- 风沙藤
- 透地连珠
- 三百两银
- 红钻
- 十八症
さらに kadsura.com によると、中国の多くの部族はこの果物のことを「神の桃(God peach)」、「長寿のベリー(longevity berry)」、「仙人の果実(fruit of the immortals)」「レッドダイヤモンドフルーツ(red diamond fruit)」とも呼んでいるそうです。
また、Cuisine of Vietnamというブログには、ベトナム北部のLạng Sơn / Yên Bái / Lào Cai / Điện Biên などの山岳地帯で栽培されていて、現地では「chi chuôn chua」「tứn khửn」などと呼ばれていると記されていました。
3.赤紫色以外にも色んな種類がある
黒老虎(布福娜)にどんな種類があるのか調べてみると、サンタクルーズ (カリフォルニア州) にあるWildlands Farm and Nurseryのページを偶然見つけることができました。
そのページを見ると、緑タイプのものや黄緑のもの、ピンクっぽいもの、濃い赤紫色のもの、そしてなんと黄色の果実も掲載されていました。外側が緑のものも、実は内側は深紅色など、面白いです!
黒老虎(布福娜)は最近になって人気が出てきた果物で、果実は「つるからぶら下がっているカラフルなパイナップルみたい」だと表現されていました。
ちなみに、上記の写真を「記事で使っていいですか?」とWildlands Farm and Nurseryの方に尋ねたところ、元々の写真を撮った方にもコンタクトをわざわざ取ってくださって、使用を快諾してくださいました。(本当にありがとうございます!)
また、Instagramでも黒老虎(布福娜)を探してみると、上記の投稿を見つけました。黄緑色っぽい果皮に内側が美しい深紅色+白色であることが分かりますよね。
投稿文を読むと、「タイのチェンマイ周辺の山奥で採れる超希少な果物」であると書かれていました。さらに、「14年間ここに滞在し、部族の村で多くの時間を過ごしましたが、(この果物は)一度も見たことがありませんでした」とも記されていました。
4. 黒老虎(布福娜)の食べ方とどんな味なのか?
黒老虎(布福娜)の食べ方は、上のビデオでも解説されていますが、分かれている果実をつまんで、先端部分からそのままかじります。スナックパインみたいな感じともいえるかもしれません。果皮(?)or 膜の中にはライチやぶどうのような果肉があるので、その部分を食べるんですね。
以下のビデオで特に詳しく紹介されているので、見てみてください。
気になる味は、Baiduには「熟した果肉はぶどうのようで、果肉が多く、甘くて香りがよい」と記されていました。
Wildlands Farm and Nurseryのウェブサイトには「マイルドな風味で、桃、洋梨、フローラル、スパイシーなどと表現される場合もある」とのことでした。
もう一方で、先ほども紹介したCuisine of Vietnamのブログ記事には「果実は食用に適しているものの、甘みは控えめで、果肉は多くありません」と述べられていました。上の写真や動画を見ても、果肉部分はわずかであることが分かります。
さらに、ハワイで珍しい果物を育てているJoe Hewitt さんの投稿文を読むと、以下のように記されていました。
Kadsura coccinea レビュータイム! 色んな熟度段階のKadsura coccinea を食べてきたので、自信を持って今の感想をお伝えできます。
要約すると、これはほとんど食べる価値のない美しい果物です。観賞用です。
観賞のためにコーヒーテーブルにKadsura coccineaの入ったボウルを置きましょう。 友達が果実の一部を摘み取って楽しませてくれます。
肝心なのは、各ピースには小さな果肉が含まれており(食べる前と後の写真を参照)、その果肉は非常に控えめな風味と最小限の甘さしかありません。
時折、軽いスイカのような風味がいいものを見つけることがあります。 他の品種がより美味しい可能性はありますか? 私はそう確信している!
ということで、甘いと書いているページもあれば、観賞用とまで書かれるほど食用には適していない場合もあるようです。
先述しましたが、kadsura.comの情報によると、味は寒さに強いタイプの黒老虎(布福娜)の方が良いとのことだったので、ハワイのような熱帯地域で育つタイプの黒老虎(布福娜)は、味がいまいちなのかもしれません。
さらに同じく kadsura.com には、カリフォルニア州で4種類の黒老虎(布福娜)を栽培した(or 現在も栽培している)コメントが載っているのですが、「4種のフレーバーは、マイルドなグレープやライチ、ピーチやチェリーまでありますが、すべて非常に繊細でフローラルな風味」と記されていました。
黒老虎(布福娜)は基本的に味が薄目なのかもしれませんが、果物は品種によって味が異なるものなので、もしかしたら今後品種改良で十分な甘さをもった黒老虎(布福娜)も誕生するかもしれません!
ちなみに生で食べる以外にも、山岳地域に暮らす先住民は黒老虎(布福娜)をジュースや醸造してワインに用いたり、果肉を酒に浸して強壮酒をつくったりするそうですよ。
5.古くから薬用効果を期待されて用いられている面も
先ほど果実を漬けて強壮剤として使用するという話も出ましたが、実は黒老虎(布福娜)の薬用効果が高い果物と言われています。
中国や南東アジアの山岳民族の間で薬用目的として長い間利用されてきた歴史があって、根から葉まで植物全体が薬として利用できるとのことです。
具体的には、腫れと痛みの軽減、胃腸炎、潰瘍性疾患、リウマチ、骨の痛み、あざの治療、月経困難症、産後のうっ血、解熱、解毒、視力の改善などに効果があるとされています。
また、乾燥させたつるは、媚薬効果があるなんて言われていたりするようです。
ただ、 sciencedirect.com によると、黒老虎(布福娜)の薬用効果についての根拠は不明確で、広くには使用されていないそうです。(より研究が必要とのこと)元々広くは知られていない果物なので、より研究が必要なのも頷けますよね。
まとめ:黒老虎(布福娜)は日本にあるの?
悪魔の実を具現化したような見た目の黒老虎(布福娜)を紹介しましたが、いかがでしたか?
野菜ソムリエHiroは今まで自分なりに色んな野菜果物の情報を調べてきたのですが、黒老虎(布福娜)ほどネットに情報が少ない果物も初めてかもしれません。
中国生まれの同僚にも知っているか聞いてみたのですが、知らないとのことで、「中国国内でもレアな存在では?」と言っていました。また、中国語でも少し調べてもらったのですが、「基本は根っこを薬用にするのがメインの用途で、果実を食べるのは本当におまけ程度。多分味もそこまで美味しくないから、流通もしてないのかも?」とのことでした。
また、何でも売ってるという中国大手のECサイト 京东商城(JD.com)でも検索してもらったのですが、黒老虎(布福娜)は無かったそうです。中国国内でも珍しい果物であることがなんとなく伺えますよね。
また、kasdura.com の姉妹サイトのように見える dragonvines.com によると、実は黒老虎(布福娜)は「サンフランシスコや南からサンディエゴまで、または北からポートランドやシアトルまで、さらにはキウイ フルーツが栽培されているカナダのバンクーバー島でも簡単に行うことができます。」と記されていました。つまり、アジアだけでなく北米でも育てようと思えば育つようです。
調べている中で、 日本でも愛知県の安城デンパークという場所で黒老虎(布福娜)が植えられているそうです。(こちらの方のブログ「アブリル – どこにでもあり、どこにもない」に写真がアップされています)
ということで、食べたら何か悪魔の実の能力が身に付きそうな気さえしてしまうフォルム、皆さんも一度は食べてみたくなったのではないでしょうか?野菜ソムリエHiroは、お金を貯めて中国の山岳地域まで行って、栽培地を見てみたいという新しい夢もできました。実現できたときはまた皆さんにも報告したいと思います!
最後に、今回の記事は中国語が読めないなりにGoogle翻訳で訳した内容も多いので、もし「黒老虎(布福娜)の情報が間違ってるよ~」とお気付きの方がいたら、お手数ですがお問い合わせフォームやSNSでコメントをいただけると幸いです。
また、もし黒老虎(布福娜)を食べたことがあるという方がいたら、ぜひその味の感想を野菜ソムリエHiroにも教えてくださいね!
ハワイで珍しい果物を育てているJoe Hewittさん(面白いものがたくさん投稿されているので、フォローをオススメします!)
Instagram
Baidu
黑老虎
Wikipedia
Kadsura
黒老虎(布福娜)を紹介しているブログ(英語)
kadsura.com
dragonvines.com