カナダのスーパーで韓国産シャインマスカットを発見。海外流出問題についてまとめてみた
2020/08/29
今や日本で大人気のぶどうといえば、「シャインマスカット」。
種が無く、皮もまるごと食べられて、糖度も高いと3拍子が揃っていて、野菜ソムリエHiroも大好きな品種です。
(父がつくっているシャインマスカット。糖度がなんと21度のものもありました)
何を隠そう、野菜ソムリエHiroの父も地元岡山でシャインマスカットを栽培しているので、個人的にもなにかと思い入れのある果物なんです。
そんな中、先日シャインマスカットをカナダ・バンクーバーにあるアジア系スーパーで発見(驚)
(実際にスーパーで見つけた韓国産シャインマスカット)
最初は「うぉおおお!バンクーバーにシャインマスカットキタ――(゚∀゚)――!!」と喜んだのですが、よく見たら韓国産。
「あぁ、これは今話題になっている”日本ブランドの国外流出問題”を目の当たりにしているのか」と感じたので、今回はその問題の現状を調べてまとめてみました。
この記事の目次
日本が生み出した海外に通用する品種「シャインマスカット」について
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所が開発したシャインマスカット。
農林水産省のMAFF TOPICSページによると、なんと研究開始から15年後にシャインマスカットと命名されたとのことです。
今のシャインマスカットにたどり着くまで研究に多大な時間をかけていることが分かりますよね。
そして、品種として登録されたのは2006年。その後、大粒で食味に優れている点から知名度が徐々に拡大。贈答用としても人気があります。
今では全国に知られているぶどうにまで成長しているのではないでしょうか?
また、農林水産省が発表した情報によると、輸出団体のPRのおかげもあり、香港、台湾でシャインマスカットの評価が高く、海外需要も増加。
YouTubeで「Shine mascut」と検索すると、以下のような海外の方がつくったたくさんの動画がヒットすることからも、日本国内にとどまらず、海外から注目を集めているぶどうといっても過言ではなさそうです。
問題は、日本で生まれたシャインマスカットが海外に(無許可で)流出していること
(実際に野菜ソムリエHiroがアジア系スーパーで発見したシャインマスカット)
海外から熱い注目を集める日本のブランドぶどう「シャインマスカット」ですが、最近TVニュースで取り上げられていたのが、シャインマスカットの海外流出問題です。
NHKニュースによると、中国(24の省や自治区)や韓国などで栽培や販売が拡大している模様で、これから海外に販売活路を広げようとしていたシャインマスカット農家の方に大打撃となっているんです。
ちなみに、野菜ソムリエHiroがバンクーバーで見つけたシャインマスカット(写真上)は韓国産で1パック $19.99+税 (日本円で約1640円)で、そこまで安い印象(むしろ日本で買うより高いかも?)はありませんでした。
しかし、NHKニュースの記事によると、中国では 1,000円くらいで販売されていたようで、価格競争で日本から輸出しているシャシンマスカットが負けてしまっているようです。
日本産と海外産の味のクオリティは実際に食べ比べしてみないと何とも言えないのですが、低価格につられて買う方もきっと多いですよね。
(販促のため英語でのシャインマスカット説明POPもありました)
品種登録の重要性について
それではここで、「なんでシャインマスカットが海外に(無許可で)栽培されているの?それを訴えれば勝てるんじゃないの?」と思う方も多いのではないでしょうか?
でも、それができないのが実情なんです。
今回の問題で重要なところは、品種登録の重要性です。
品種登録とは、呼び名の通りなのですが、新しい品種を農林水産省のデータベースに登録することで、知的財産の一つである育成者権を取得できる制度です。
これにより、登録された品種の種苗、収穫物の販売等を(一定期間)独占できるようになるのですが、本当に権利を守ろうと思ったら、日本での品種登録だけでなく国ごとに行わないとダメなんです。
そして、シャインマスカットの場合、開発した農研機構が国内での生産を当初想定していて、海外で品種登録を行っていなかったため、今回の流出問題になったのです。
農林水産省のデータによると、日本での品種登録出願件数は1年で1,000件以上。(野菜果物以外も含みますが、UPOV加盟国の中で第3位の多さ。UPOV条約は植物の新品種を各国が共通の基本原則にならって保護する条約です。)
また、日本から外国への出願件数も増加傾向にあるということで、多くの栽培者が品種登録の重要性を理解していることがうかがえます。
しかしながら、NHKニュースによると海外で品種登録をする場合、100万円以上かかり、国内での出願から6年以内と期限も決められていることが、栽培者にとっての大きなハードルになっているようです。
そのため、みなさん思うところがあると思うのですが、野菜ソムリエHiroの個人的見解は、
②それを知ってか知らずにシャインマスカットを日本の外で栽培している人たちも悪いといえば悪いし、
③海外品種登録が容易にできない環境も悪いといえるのではないでしょうか?(出願から6年以内という期日のため、気付いたときには遅かったというケースもあり得ますよね)
また、最近ではシャインマスカット以外にも、日本の登録品種が無断で海外に持ち出されて、その収穫物が日本に逆輸入されるケースも。
例えば、以下のいちごの品種が逆輸入されています。
■ いちご(レッドパール)・・・韓国の一部生産者に利用を許諾後、増殖して日本に逆輸入
■ いちご(章姫)・・・韓国の一部生産者に利用を許諾後、増殖して日本に逆輸入
■ いちご(とちおとめ)・・・平成17年に韓国農水産物流公社が作成した韓国国際展示会のパンフレットに韓国産イチゴとして記載
もしかしたら、今後シャインマスカットが逆輸入されるなんてこともあるかもしれませんね。そう考えると、日本の果物のブランド価値が下がる気がして、少し悲しい気持ちになる方も多いのではないでしょうか?
最後に:2016年からは品種登録の費用が一部補助される制度も
(秋の農園で見つけた樹上で熟したシャインマスカット)
ということで、シャインマスカットの国外流出問題について今回は取り上げました。
農林水産省ではこのような流出問題を受けて、新品種の保護を強化・促進する取り組みがすでに行われていて、海外品種登録経費の補助をしたり、海外出願マニュアルの作成などが行われています。
詳しくは、農畜産業振興機構のページに情報がまとめられているので、チェックしてみてください。
個人的に日本の果物を外国(カナダ)で食べられるのは、正直なところ日本人として嬉しいです。実際、シャインマスカットをお店で見つけたときは、感動。カナダって、日本みたいなブドウが手に入りにくいので、喜びもひとしおでした。
でも、それが正しいルールの外で栽培されたかと思うと、やっぱり買う気を無くしてしまったので、「いつか日本で栽培されたシャインマスカットがカナダで買えるようになるといいな」と思います。
あと最後になりますが、SNSを見るとよく「韓国も中国も日本のものを盗みやがって!一体どんな国なんだ!」みたいなコメントを多く見るのですが、野菜ソムリエHiroには、韓国人、中国人の友達も少なからずいて、みんないい人たちばかりなので、もしできたら国全体で言うのではなくて、悪意を持って盗んだ本当に悪い人に対してのみ苦言をしてもらえるといいなぁ、なんて思っています。
高望みしすぎですかね?
バンクーバーでは韓国産の巨峰が毎年出回るんですよ😄
高級アイテムです🍇 pic.twitter.com/UYlTS72nxI— カナダの野菜ソムリエHiro🇨🇦 (@hiro_vegetable) August 25, 2020
NHKニュース おはよう日本 ブランド果実 海外流出問題
農畜産業振興機構 【農林水産省から】海外における品種登録の推進について
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